2009 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーの情動行動に関する比較認知・行動学的研究
Project/Area Number |
09J02299
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
狩野 文浩 Kyoto University, 霊長類研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | チンパンジー / 情動行動 / 注視反応 / 眼球運動 / 顔 / 視線の向き / アイ・トラッキング / 種間差 |
Research Abstract |
チンパンジーの同種の情動行動に対する反応を調べた実験において、チンパンジーの様々な情動行動を映したビデオクリップをチンパンジー被験者に提示し、ビデオクリップに対する注視時間を計測した。その結果、チンパンジーは特に同種の闘争場面(Agonism)に対し強い注視反応を向けること、また、チンパンジーは情動行動を区別するために様々な手がかりを用いていることがわかった。チンパンジーはヒトと同様に、複雑な場面理解をしていることが示唆された。また、本年度はヒトとチンパンジーのアイ・トラッキング(注視点追跡)の手法を用いた比較実験において大きな進展があった。まずチンパンジーが顔写真を観察している際の注視パターンを明らかにし、それをヒトの注視パターンと比較した。チンパンジーとヒトの注視パターンは互いによく似ていたが(顔の中心を特に長く見る、目を優先的に見る、など)、同時に興味深い種間差も明らかとなった。ヒトは目の部位をゆっくりと注視する傾向が強いが、チンパンジーは顔全体をすばやく注視する傾向が強いことがわかった。結果から、ヒトにとって目をみることがどのように重要であるのか(目の動きを読む)、より詳しい知見を得た。また、共同研究として、チンパンジーとヒトの顔の向きに対する注視反応を調べた。本年度の最大の成果は、手法を徐々に洗練させることによって、ヒトとチンパンジーの比較の精度を向上させ、ヒトとチンパンジーの類似点のみならず、これまで明らかでなかった相違点にも言及できるようになった点である。
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Research Products
(8 results)