2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02374
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 Hokkaido University, 低温科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 表面原子反応 / 星間塵 / 分子雲 / 極低温 / アミノ酸 / 二酸化炭素 / アミン |
Research Abstract |
当初の予定では、シアン化水素(HCN)への水素原子付加反応を検証する予定であったが、HCNの国内生産が中止され、かつ法律の規制により国外から輸入することができないため、実験予定の修正が余儀なくされた。そこで、代替の研究として、星間塵表面上での二酸化炭素(CO_2)生成に関する研究をはじめに行った。過去の研究で、メチルアミンとCO_2の混合氷に電子線を照射することにより、代表的なアミノ酸の一つ、グリシンの生成が確認された。これまでの分子雲におけるCO_2生成に関する研究では、紫外線などのエネルギー照射を水と一酸化炭素(CO)混合氷へ行うことでその生成が確認されていた。しかし、光の届かない分子雲内部では、紫外線等エネルギー源を介しないCO_2生成経路の確立が必要とされる。そこで、水をプラズマ分解させて生成させた低温のヒドロキシルラジカル(OH)とCOのnon-energeticな反応によるCO_2生成を検証した。COとOHを極低温(~10K)に冷却された基板上で反応させると、効率的にCO2が生成されることが確認された。基板温度により生成物の量や生成速度が異なることから、反応に用いられたOHはnon-energeticであると考えられる。導入されたCOのうち、そのおよそ2-10%がCO_2生成に使われた。これは、紫外線等エネルギー源を介した反応の変換効率に匹敵する値である。 上記に加え、アセトニトリルへの水素原子付加反応を検証した。COや酸素分子(O2)と同様に、アセトニトリルにも水素原子付加が起こり、数種の生成物が確認された。しかしながら、その反応速度はCOやO_2への水素原子付加反応と比べて非常に遅く、分子雲の平均的なタイムスケール(~10^6年)内では、効果的といえなかった。本研究結果は、分子雲で検出されたアミン化合物は、ニトリル化合物への水素付加反応ではない別の経路で生成されたことを示唆する。
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Research Products
(11 results)