2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02479
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永井 裕崇 Kyoto University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 環境発がん / 鉄発がん / アスベスト / DNA傷害 / 発がん予防 |
Research Abstract |
私達は今年度、アスベスト誘発発がんモデルの確立と、それに対する鉄負荷減少法の適用によるアスベスト誘発発がんの予防法の検討を行った。またもう一つは、アスベスト表面に吸着する生体分子を網羅的に同定し、その生物学的意義の検討を行った。 まず、アスベスト誘発発がんモデルの確立についてであるが、過去の報告にあった腹腔内投与法を用いた。約1年で腫瘍が出来ると期待されていたが、実際その通りであった。現在も腫瘍は出来つつある。また、本研究の大きな目的として、アスベスト誘発発がんの予防法の確立がある。そのため、アスベスト発がんに関与すると考えられている鉄を体内から積極的に除去することによって発がん率の変化について検討した。鉄負荷減少のために用いた方法は2種類であり、瀉血と経口鉄キレート剤投与である。現在経口鉄キレート剤投与の群において癌の発生が遅れている事を示唆するデータが出つつある。発がん実験は長期にわたるために、結論に至るには更に約1年間必要である。 次に、アスベスト結合タンパクの網羅的同定を行った。アスベストをラットの肺ライセートなどと反応させ、免疫沈降法の変法を行う。するとアスベスト繊維に付着するタンパクがSDS-PAGEによって分離出来るため、それらのタンパクを質量分析を用いて網羅的に同定した。合計100種以上のタンパク質を同定し、その中には細胞骨格タンパク、ヒストン、ヘモグロビン、ストレス応答タンパクなどがあった。このうち、私達はヒストンとヘモグロビンを特に重要であると考えている。ヒストンはクロマチンの構造タンパクであり、アスベストがヒストンを吸着するという事実は、アスベストによるDNA傷害の一つの機構になりうると考えている。また、ヘモグロビンは鉄を含む主要分子であり、アスベストがヘモグロビンを吸着することで、体内における鉄動態に影響を与えると考えられる。
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Research Products
(4 results)