2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02497
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三橋 陽介 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 戦時司法体制 / 戦区検察官 / 軍法裁判権 / 湖北国統区の司法権 / 司法の党化 / 〓帰県 |
Research Abstract |
本研究は、中国近現代の法及び司法制度の特徴を明らかにするために、中国、台湾、米国等に所蔵される旧司法文書(档案)にあたり、機構、人事、政策、経費の視点から重層的に考察し、訓政期の中国国民党政権の司法制度を再構成することにある。本年度は、〓帰県へのフィールド調査に加え、湖北省档案館(武漢)、四川省档案館(成都)、中国第二歴史档案館(南京)、江西省档案館(南昌)、国史館(台北)、中国国民党党史館(台北)を訪問して史料調査を行なった。 そのかいもあって、本年度は、歴史人類学会・30回大会(2009年9月)で口頭発表をし、『史鏡』60号、2010年3月に、「日中戦争前期、湖北国統区における司法権の行使とその限界-戦区検察官と県長の摩擦を手がかりに-」と題する論考を掲載することができた。同論考は、国民党政権、共産党政権、日本傀儡政権の三政権が勢力圏の確保にあたった湖北省の南西部に位置する〓帰県で起きた、戦区検察官と県長の食米の隠匿をめぐる紛糾の事案から、日中戦争前期の前線国統区における司法権の行使とその限界に迫るものである。日本が中国に侵攻・占領した裏側の前線国統区における司法制度を解明する試みでもある。本論考では、戦時の到来によって、司法権は、軍法裁判権に優先され、制限を課せられたが、軍権と行政権の恣意的な行為に対しては、牽制することに努めており、一定の影響力を及ぼしていたことを明らかにした。 引き続き、四川省档案館など各地の档案館を訪問して史料収集を行いつつ、司法官一覧の作成にあたる。既に収集した史料の分析に徐々に重点を移して、「司法の党化」という政策によって、どのような政治的、法制的な結果が生み出され、その歴史的意義が如何なるものであったかを探求する博士学位請求論文の一部分となる論考を作成する。12月には、博士論文構想発表を行う。
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