2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02911
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 裕子 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 平安貴族社会 / 家族関係 / 親族関係 / 養子 / 服喪 |
Research Abstract |
本研究の目的は、父子関係・兄弟関係・養子関係の三つの観点から、平安貴族社会における家族のあり方を明らかにすることである。本年度は氏や中世的「家」に関する代表的な論文を読み込むと同時に、摂関期から院政期初頭にかけての古記録類を精読し、実際の家族・親族関係を財産継承や服喪など様々な角度から分析することによって、当該期の家族・親族意識の実態と変化を明らかにすることを試みた。 まず、財産継承について小野宮第の伝領を中心に分析し、財産処分においては財主の意思が相当大きな力を持っていたために養子への財産分与も可能であったが、基本的には養父の財産は養子には分与されなかったという結論を得た。 また、摂関期から院政期初頭にかけての養子縁組の変化についても『小右記』『御堂関白記』『中右記』などの日記類や『公卿補任』『尊卑分脈』といった二次史料を手がかりに分析を行った。その結果、従来の研究では養子とする対象の範囲は父系親族が中心で他人養子は例外的であるとされてきたが、十一世紀初めから養子の対象範囲は父系親族のみならず妻方親族や家人にまで拡大し、父系親族のみを養子とすることはむしろ例外であったことが確認できた。このように養子関係が多様化していく十一世紀中葉以降には、養傍親の死去に対する服喪に混乱が生じていたことも確認できた。同じように養子関係にあっても、養傍親の喪に服す場合と服さない場合とがあったのである。これは養子関係の多様化によって親族関係が複雑化したためと考えられる。 以上の分析より、平安貴族社会における家族・親族関係は十一世紀中葉に大きく転換していったと考えられる。
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