Research Abstract |
アラメチシン(Alm)は,異常アミノ酸であるα-aminoisobutyric acid(Aib)を含む20アミノ酸残基から成る抗菌ペプチドである。両親媒性α-helix構造をとり,3分子~12分子が会合して脂質膜にイオンチャネルを形成する。AlmのN末端にリジンやグルタミン酸などの電荷をもったアミノ酸を付加することにより,平均開口時間が3-4倍程度長くなること,また,ヒスチジンを付加したAlm誘導体は,Zn^<2+>などの金属イオンの存在下において,特定の会合レベルの開口時間がAlmよりも100倍以上長いチャネルを形成することは前年度に報告したが,この成果は2010年5月にBiophysical Journalにて掲載された。今年度は,pH依存性を持たないアラメチシン(Rf50)を膜貫通領域,Ca^<2+>結合タンパク質であるカルモジュリン(CaM)のCドメイン(CaMc)を膜外配列にもつハイブリッドチャネルタンパク質Rf50-CaMcを調製し,これがpH5.4付近においてCa^<2+>感受性イオンチャネルとして機能することを示した。Rf50-CaMcのチャネル電流測定では,pH5.4,Ca^<2+>存在下においては,特定の会合レベルの開口時間の顕著な延長が生じ,その結果,Ca^<2+>非存在下と比較して約6倍の平均チャネル電流の増加が生じた。さらに,8-anilinonaphthalene-1-sulfonic acid(ANS)の蛍光測定により,Ca^<2+>の結合によってCaMcの構造変化が起こり,タンパク質内部に埋もれていた疎水性部分が表面に露出することを確認した。このことから,特定の会合レベルの安定化には,膜外配列であるCaMc間の疎水性相互作用が関与していることが示唆される。
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