2009 Fiscal Year Annual Research Report
自己集合半導体単一量子ドットにおける光励起核スピン分極の双安定特性の研究
Project/Area Number |
09J03255
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鍜治 怜奈 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 単一量子ドット分光 / 核スピン分極 / ポンプ-プローブ法 / 核スピン緩和時間 / 電子g因子評価 / 偏光定常測定 / 励起子スピン緩和時間 |
Research Abstract |
単一量子ドット(QD)における光誘起核スピン分極のダイナミクス及び双安定現象の物理解明という目的の下,当該年度は以下の3点に研究の力点を置いた. 1)時間分解測定を用いた核偏極形成・緩和時間の評価 核偏極のダイナミクスに関する詳細なモデルを構築する上で,核偏極の形成・緩和時間の評価は不可欠である.本年はポンプ-プローブ法を用いたQD発光の時間分解測定を行い,各時定数を評価した.特に,核スピン間の双極子相互作用を介したスピン拡散過程に対して,縦緩和時間T1~15秒,横緩和時間T2~200ミリ秒を得たが,これは研究の主対象であるInAIAs QDでは初めての報告である. 2)高核偏極状態と安定性の検証 励起光強度や励起偏光,外部磁場強度,温度など外部パラメータに対する核スピン分極率の依存性を調べることで,高い核偏極状態がパラメータの変動に対して敏感でないことを実験的に確認した.高偏極状態では核磁場効果によって電子スピンのエネルギー準位が実効的に縮退していることから,先の事実は目標とする量子ビット変換に必要なエネルギー構造の安定性を保証する結果となっている. 3)偏光定常測定による励起子緩和時間評価 単一QD分光では信号強度の微弱さから,時間分解能が数10ミリ秒オーダーに制限され,より速い時間領域のダイナミクスを議論することはできない.我々は励起子発光の偏極率(DOP)に着目することで,定常測定でありながらナノ秒オーダーの励起子スピン緩和時間の評価に成功した(PRB 80,235334).今回得られたスピン緩和時間は,QD集団について他の測定手法を用いて評価された結果と良い一致を示した.またDOPがキャリアのエネルギー変化を敏感に検知することから,本手法によって測定系の分解能以下の微小な核磁場効果をも議論することも可能となり,研究を遂行する上で大きな意義がある.
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Research Products
(11 results)