2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己集合半導体単一量子ドットにおける光励起核スピン分極の双安定特性の研究
Project/Area Number |
09J03255
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鍛治 怜奈 北海道大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 単一量子ドット分光 / 発光円偏光度 / 電子スピン緩和 / 核磁場揺らぎ / 光学異方性 / 歪み分布異方性 / 面内形状異方性 / 単一量子リング |
Research Abstract |
目的とする光検出核磁気共鳴の実施において必要となる核スピン分極(NSP)のダイナミクスと発光偏光度(DOP)に関する知見を得るため,本年度は以下の2点に研究の力点を置いた. 1)核磁場揺らぎによる電子スピン緩和時間の実測:電子の三次元閉じ込め構造である量子ドット(QD)中では,スピン-軌道相互作用が抑制されることに加え,ドットを構成する原子核とのスピン交換相互作用(超微細相互作用:HFI)が増強されるため,後者(HFI)が主要な電子スピン緩和機構となることが指摘されている.電子スピン分極の指標である正の荷電励起子発光の円偏光度と,電子が受ける全有効磁場との相関を取ることで,HFIによる電子スピン緩和モデルの主要なパラメータΔB_N(核磁場揺らぎの大きさ)の実測に成功した.得られた値(ΔB_N~40mT)が理論値とよく一致することに加え,ΔB_Nに起因する電子スピン緩和時間が発光寿命(~0.75ns)と同程度になることが分かった.また電子スピン系を含むNSP形成モデルを構築し,時間分解測定の結果と比較することで,モデルの妥当性を確認すると共に,NSPダイナミクスに関する詳細な知見を得た. 2)量子ナノ構造体における光学異方性の調査:昨年度までに,面内形状や歪み分布の異方性がQD発光のDOPに多大な影響を及ぼすことを明らかにした.本年度は多数のQDについて光学異方性を観測し,これを特徴づけるパラメータ(形状異方軸:θ_b,歪み分布軸:θ_s,電子-正孔間交換相互作用エネルギー:δ_b,価電子帯混合度:ρ_s/Δ_<lh>)の傾向を調査した.θ_s,θ_bは同一試料上では特定の方向(ただしθ_s≠θ_b)に揃いやすい傾向が見られたが,その位相差(θ_s-θ_b)及び相互作用の強さの差(ρ_s/Δ_<lh>-δ_b)の間に明確な相関は確認されていないため,歪み分布異方性と面内形状異方性は互いに独立と考えられる.また,同様の測定を量子リング(QR)試料について行い,δ_bがQD試料に比べて小さな値を取ることを見出したが,これはQR構造では面内形状異方性が緩和されることを示唆している.
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Research Products
(11 results)