2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本人における食品摂取パターンの評価手法に関する栄養疫学的研究
Project/Area Number |
09J03370
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大久保 公美 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 食品摂取パターン / クラスター分析 / 妊娠女性 / 胎児成長 |
Research Abstract |
本研究の2年目に、クラスター分析を用いた食品摂取パターンによる評価手法が確立された。最終年度となる本年度の目的は、特に、妊婦ならびに子どもの食品摂取パターンに焦点を当て、前年度に引き続き、さまざまな健康状態との関連を検討することである。具体的には、(1)妊娠中の母親の食品摂取パターンと胎児成長との関連、(2)子どもの食品摂取パターンに影響を及ぼす要因の同定である。しかし、スペースの関係上、(1)のみの結果を報告する。 【妊娠中の母親の食品摂取パターンと胎児成長との関連】 胎児成長に及ぼす妊娠中の母親の食事要因として、これまでに野菜、果物、乳製品、魚介類、ビタミンB群、脂肪酸が示唆されているが、統一した見解は得られていない。その理由の一つとして、これまでの多くの研究が単一栄養素や食品に焦点がおかれていたことが挙げられる。胎児成長について更なる栄養学的知見を得るためには、日常の食事形態や生体内における栄養素間の生理学的な相互作用をも考慮した「食品摂取パターン」による評価手法を用いた研究が必要である。そこで、大阪府寝屋川市とその近隣に在住する865名の妊婦から協力を得て収集した食事ならびに生活習慣全般に関する既存データベースを活用した(大阪母子保健研究)。食事質問票に掲載されている150食品を食品の類似性から33食品群に分類し、各食品摂取重量を密度法によりエネルギー調整した後、クラスター分析(K-means法)を行った。その結果、対象者は「肉類・卵(n=423)」、「小麦製品(パン・菓子・麺類)(n=371)」、「ごはん・野菜・魚介類(n=203)」中心群の3つのクラスターに分類された。児の出生時体重、身長、頭囲は残差法により在胎週で調整した。胎内発育遅延児は、平成12年乳幼児身体発育調査より報告された体重、身長、頭囲の男女別身体発育曲線の10パーセンタイル未満とした。胎児の成長に影響を及ぼすと考えられる種々の交絡要因で調整し、3つの食品摂取パターン間で出生時身体計測値を比較したところ、体重(P=0.045)と頭囲(P=0.036)で有意な群間差がみられ、「小麦製品」中心群は最も低い値を示した。さらに「めし・野菜・魚介類」中心群を基準に比較したところ、「小麦製品」中心群は、胎内発育遅延児(体重)を出産するリスクが有意に高かった(オッズ比:5.2、95%信頼区間:1.1-24.4)。一方、身長ならびに頭囲の胎内発育遅延児の出産リスクについては、差は見られなかった。以上より、パンや菓子類が多く、めし・野菜・魚介類が少ない食品摂取パターンを有する妊娠女性は、胎内発育遅延児を出産するリスクが高いことが示唆された。この結果は、妊娠中の母親の食品摂取パターンの栄養適正の低さが、子宮内における胎児の成長(特に、体重増加)に不利に働くことを示唆するものである。しかし、本研究の解析対象者数が少ないため、今後、対象者数を増やした同様の検討が必要である。
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Research Products
(7 results)