2009 Fiscal Year Annual Research Report
Rad51依存的な二重鎖切断修復を制御する新規化合物の探索とその作用機序
Project/Area Number |
09J03499
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石田 恭子 Waseda University, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Rad51 / 相同組換え修復 / ガン細胞 / 低分子化合物 / DIDS / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、Rad51依存的な相同組換え反応に影響を与える低分子化合物の探索を行い、それら低分子化合物によるRad51の活性制御目的としている。Rad51遺伝子を欠失させたマウスは、胎生致死となる。一方で、Rad51を過剰発現させた細胞では、ガン細胞の特徴でもある染色体異常が観察され、また種々のガン細胞においてRad51の発現量の変化が報告されている。これらのことは、Rad51の厳密な活性制御が細胞の恒常性維持において重要であることだけでなく、Rad51の発現量の変化や活性の強弱が細胞のガン化を促進する1つの要因となっていることを示唆している。そこで申請者は、Rad51の活性調節を行うことで、細胞のガン化を防ぐ、もしくは悪性化したガン細胞の増殖を抑制することが可能になるのではないかと考えた。これまでに、申請者はRad51の主要な活性である相同鎖交換活性を著しく低下させる低分子化合物4,4'-diisothiocyanostilbene-2,2'-disulfonic acid(以下DIDSと略)を発見している。しかし、その作用機序は不明であるため、申請者は本年度、DIDSによるRad51活性への影響を生化学的手法により解析した。相同鎖交換反応の前段階に起こる相同的対合反応に対するDIDSの影響を解析した結果、DIDSはRAD51の相同鎖交換活性だけでなく、相同的対合活性をも阻害することを明らかにした。Rad51とDIDSとの物理的相互作用が確認できたことから、次にDIDS存在下でのDNA結合解析を行った。その結果、DIDSは、Rad51の単鎖及び二重鎖DNAへの結合を著しく阻害することが明らかになった。さらに、Rad51はDNA依存的にATP加水分解活性を示すが、DNA非存在下でDIDSのみ存在する場合でも、その活性を示すことが分かった。このことから、RAD51にDNAが結合するサイトと、DIDSが結合するサイトが競合して存在していることが示唆された。以上の結果から、DIDSはRad51のDNA結合部位周辺に結合することで、Rad51のDNAへの結合を阻害し、相同組換え活性を低下させると結論された。そこで、今後はRad51-DIDS複合体の共結晶を作製し、結晶構造解析を行うことで、DIDSによるRad51活性への作用機序を分子レベルで明らかし、Rad51とより特異的に相互作用し細胞内で作用する低分子化合物のデザインを目指す。
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