Research Abstract |
本研究は,水中運動時における温熱的快適性の評価手法の開発を目的とし,環境条件に加えて,特に寒冷適応能を含む被験者の特性を考慮した総合的評価を行うことに独自性を有する. 異なる水温および気温条件が水浸時の体温調節応答および温冷感に及ぼす影響を検討するために,成人男性を対象に水浸安静実験を行った.水温3段階(23,26,34℃),気温2段階(27,32℃)における60分間の胸部水位水浸安静時の体温調節応答および温冷感の測定を行った.水温23℃環境では気温の違いによる差は見られなかったが,水温26℃環境においては,気温32℃条件で低い産熱応答を示し,気温27℃条件に比べて直腸温が有意に低下した.この結果から,水浸時の深部体温変化は環境条件との熱交換のみによらず,産熱等の体温調節応答の影響を受けることが示された.すなわち,温熱的快適性を環境条件のみから予測することには限界があり,体温調節応答を変数として含める必要性が示された. 寒冷適応能が水浸時の体温調節応答および温冷感に及ぼす影響を検討するために,成人男性を対象に,4週間の寒冷馴化を行い,馴化前後の水浸安静時および20%最大強度の膝伸展運動時における体温調節応答を検討した.被験者全体としては皮膚温を低下させる断熱型の寒冷馴化を示したが,産熱を亢進させる産1熱型の被験者も見られ,馴化期間中の生理応答が馴化型を左右する可能性が示された. 寒冷馴化期間の生理応答と馴化に伴う体温調節応答の変化の関係性の検討を英国Portsmouth大学にて行った.5分間の短時間水浸による寒冷馴化群,1℃の直腸温低下を伴う寒冷馴化群および対象群を設定し,馴化期間前後の長時間寒冷水浸時の体温調節応答の比較を行った.短時間水浸群では,水浸直後の換気亢進が抑えられたが,長時間水浸に伴う震え産熱および直腸温の変化には馴化前後の差は見られなかった.
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