Research Abstract |
本研究は,水中運動時における温熱的快適性の評価手法の開発を目的とし,環境条件に加えて,特に寒冷適応能を含む被験者の特性を考慮した総合的評価を行うことに独自性を有する. 寒冷適応能について,英国Portsmouth大学と共同研究を行った.被験者21名を対象とし,適応期間中に皮膚温のみ繰り返し低下させる群(5分間×5回),皮膚温に加えて深部温を1.15℃低下させる群(平均45分間×5回),コントロール群の3群を設定した.適応期間前後に,90分間または直腸温が35℃に低下するまで水温12℃に水浸し,震え産熱応答の馴化を検討した.その結果,皮膚温低下群では入水初期の換気亢進に馴化が見られたものの,5分以降の長時間水浸においては震え産熱の馴化は見られなかった.深部温低下群では,深部温が1.15℃低下するまでの震え産熱に馴化が見られたが,深部温がさらに低下すると馴化は見られなかった.コントロール群は変化を示さなかった.これらの結果から,皮膚温のみの低下では十分な産熱応答の馴化は起こらず,また,繰り返し深部温低下の結果生じる震え産熱の馴化は適応期間に低下した深部温の範囲に限定され,それを下回る深部温では馴化が見られないことが明らかになった. 国内で実施した水温26℃Tでの繰り返し水浸(60分間×10回)に伴う寒冷適応実験では,適応期間における深部体温の低下や震え産熱の亢進が小さく,皮膚温および皮膚血流量を減少させる断熱型の寒冷適応が見られた.また,同時に実施した指寒冷水浸時の寒冷血管拡張反応(CIVD)の検討では,先行研究に反して,寒冷適応期間後にCIVD反応の減弱が見られた.本研究では局所寒冷水浸時のCIVD指標により被験者の寒冷適応能の評価を行い,全身水浸時の体温調節応答や温熱的快適性を予測する際の寒冷適応能のパラメータとしての使用を想定していたが,適応期間における寒冷刺激の程度によってCIVD指標の変化が異なる可能性が示唆された.
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