2009 Fiscal Year Annual Research Report
実数および虚数化学ポテンシャル領域におけるQCD相図の統一的解明
Project/Area Number |
09J03667
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柏 浩司 Kyushu University, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | QCD相図 |
Research Abstract |
有限温度・密度でのQCD相図の構造は大きく影響するベクター型相互作用について、Polyakov-loop extended Nambu-Jona-Lasinio (PNJL)模型を用いて、その効果がどのような物理量に現れるか調べた。その上で、格子QCD計算が可能な虚数化学ポテンシャル領域において、PNJL模型の計算結果と格子QCDデータとの比較を行い、ベクター型相互作用の結合の強さの見積もりを行った。その際、格子QCDデータをより再現するため、高次相互作用も考慮した。現状の格子QCDデータは、まだ精度があまり良くなくデータ数も少ないため、本見積もりはテスト計算の域を出ないが、ベクター相互作用がこれまでの研究で使われてきた値よりも非常に強いこと、更に高次相互作用とベクター相互作用の効果の打ち消し合いが有限密度で起こることが分かった。これらの結果は、これまでのQCD相図の構造の理解に影響するだけでなく、中性子星の計算をする際に使う状態方程式にも影響する可能性が高い。 今後の定量的比較のため、中間子質量の計算も行った。これは、秩序変数や相転移線よりも格子QCDデータとの比較を行う際の不定性が少ないためである。その結果、虚数化学ポテンシャルでの中間子質量は、ベクター相互作用や高次相互作用の決定に使うことのできる重要な量であることが分かった。さらに双対クォーク凝縮と呼ばれる量の計算も行い、この量もベクター相互作用の結合の強さの決定に有用であることを示した。次に、ダイクォーク凝縮を導くクォーク-クォーク相互作用を調べるため、PNJL模型でダイクォークの質量計算を行った。その際、格子QCDデータとの比較を念頭に置き、虚数化学ポテンシャルでの計算を行った。しかし、現状では格子QCDデータがないため具体的な比較は行なっていない。定性的な解析では、ダイクォーク質量を用いることで、その結合の強さを決めることができる可能性があることを確認した。
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Research Products
(11 results)