2009 Fiscal Year Annual Research Report
Reelinシグナルと精神疾患との関連性に対する多面的解析
Project/Area Number |
09J03671
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
今井 英明 Kobe University, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Reelinシグナル / Dabl / 大脳新皮質 / 海馬 / ニューロン層構造 / 精神疾患 |
Research Abstract |
本研究では、哺乳類のいくつかの脳領域で認めら「ニューロン層構造」の機能的意義、および、層構造の崩壊と精神疾患との関連性を明らかにするため、前脳特異的にReelinシグナル細胞内因子であるDablタンパクを機能欠損させたマウス(Dabl cKOマウス)の作製し、その形態学的および行動学的異常を検索した。Dabl cKOマウスは、大脳新皮質と海馬で顕著な層構造異常を示すが、小脳皮質においては正常に発達することが観察され、Dabl遺伝子nullミュータントであるyotariマウスで認められる小脳性運動失調を示すことなく、正常な運動機能を有していることが確認された。さらに、このマウスを用いて、ホームケージ内での自発的活動量、聴覚刺激に対する驚愕反応、情動、記憶/学習能力を測定する行動解析実験を行った。自発活動量や聴覚性驚愕反応に異常は認められなかったが、オープンフィールドテストおよび高架式十字迷路課題において不安様行動がcKOマウスで有意に減少することが明らかになった。これらの結果は、情動の低下と大脳新皮質の層構造の崩壊との関連性を示唆している。恐怖を感じることは、個体が生存する上で非常に重要な能力であると考えられるが、この行動が大脳新皮質、特に前頭前野の層構造異常によって欠損することが初めて明らかになった。一方、記憶/学習行動の評価課題としてMorris型水迷路課題および物体認識課題を行ったが、cKOマウス群と対照群との間に顕著な差は認められなかった。これらの課題は海馬依存的であると考えられているが、本研究より海馬層構造の崩壊が記憶/学習課題へ与える影響は小さい可能性が示唆された。今後は、網羅的行動解析によるDabl cKOマウスの精神疾患モデルとしての有用性、およびその原因となる分子メカニズムについて、形態学的、行動学的、分子生物学的手法を用いたさらなる解析を行う予定である。
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