Research Abstract |
これまで,アフィニティ樹脂に対して,できる限り非特異的タンパク質の吸着を抑制し,選択的に特異的タンパク質を捕捉できるアフィニティ樹脂の開発に注力し,成果を挙げてきた。本研究では,アフィニティ樹脂の基材として,生体物質との相互作用が少ないと言われているポリエチレングリコール(PEG)を主鎖に持つ有機ポリマー(PEG型ポリマー)を用いている。アフィニティ樹脂に担持されたリガンドとそれに相互作用するタンパク質を解析するためには,基材自体が持つ特性についての知見が必須であると考えられる。本年度は,PEG型ポリマーをキャピラリーカラム(PEG型カラム)として調製し,高速液体クロマトグラフィーを用いて,種々の官能基を有するベンゼン誘導体,核酸塩基類などに対する保持特性を明らかにすることによりPEG型ポリマーの化学的表面特性について精査することを目的とした。 第一の成果として,PEG型ポリマーの伸縮性を利用し,比較的大きな内径を有するキャピラリーカラム(500μm I.D.)の調製に成功した。第二の成果として,PEG型カラムは,カルボキシル基を有する化合物に対して特異的な保持特性を示すことが明らかになった。生理活性物質の多くは,カルボキシル基を有するため,アフィニティ樹脂上に担持されたリガンドの他に,フリーで存在するリガンドが特異的タンパク質の捕捉に影響を及ぼす可能性が示唆された。また,移動相に用いる有機溶媒/水の混合比率に関わらず,核酸塩基類は保持されないことが分かった。この結果は,PEGの両親媒性から固定相上における水の濃縮が生じないことを示唆している。すなわち,PEG型ポリマーは,多くの水をまとい機能しているタンパク質の表面水構造を乱さない,ソフトな表面を有していることが示唆されている。これらの結果からも,PEG型ポリマーがアフィニティ樹脂基材として有用であることがわかった。
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