2009 Fiscal Year Annual Research Report
半導体人工構造における空間分離2次元電子正孔系の物質相
Project/Area Number |
09J03735
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 卓也 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子井戸 / 界面電場 / 励起子発光 |
Research Abstract |
申請者はZnO量子井戸中で空間的に分離された電子正孔系の状態を理解することを研究の目的とし、そのために当該年度はまずZnO量子井戸中励起子状態の基礎的な情報を取得することを目的とした。具体的には井戸の幅の変調に研究の焦点を絞った。1枚の基板上に井戸幅を広範に変化させて作成された量子井戸からの発光を詳細に調べるために顕微分光系を立ち上げた。以下にその詳細を記す。 1.井戸幅の薄い領域(1-10nm) ZnO量子井戸からの発光にはバルクに比べて大きな線幅広がりが観測される。その起源を調べるため同一基板上で1nmから10nmまで井戸幅を変えたMg1-xZnxO/ZnO/Mg1-xZnxO単一量子井戸の顕微発光分光を行った。He-Cdレーザーによる励起スポット径は1.3μmで測定した。発光スペクトルは主線およびフォノン線を不均一広がりで広げたものでうまくフィットできた。そこで不均一広がりを与える最も小さく不可避な要因として、上下1モルイヤーの井戸幅揺らぎ(0.52nm)による発光エネルギーの揺らぎを、発光ピークエネノレギーの井戸幅依存性から見積もった。例えば井戸幅が3nm付近ではその揺らぎは57meVと見積もられ、2σ=58meV(σは主線の不均一広がりの標準偏差)と近い値が得られた。量子化エネルギーの揺らぎと一致する幅が得られるという傾向は井戸幅が4nmを超えて量子井戸による閉じ込め準位の変化が小きくなる領域でも観測され、これは自発分極・圧電分極により発生しだ内部電場による発光の大きな井戸幅依存性を反映しているものと考えられる。 2.井戸幅の厚い領域(10nm以上) さらに井戸幅が厚くなると、内部電場によって励起子中の電子正孔のオーバーラップが小さくなり発光強度が非常に弱くなる。一方で井戸幅の厚い極限ではバルクZnOと同様の発光をする。この中間領域には、内部電場がなんらかの要因によりスクリーンされる領域が存在するはずである。そのようなスクリーニングの要因と考えられるものは、残留キャリアによるものであり、実際この残留キャリアがZnO/Mgl-xZnxO界面近傍に溜まることで高移動度の電子ガスが形成されると考えられているが、その面直方向の広がりについては評価する手段がなかった。そこで本研究では、井戸幅を更に広範に変化させてそのようなスクリーニング領域の探索を行った。30nmの厚みのところで、バルクZnOと同じ位置に発光が観測され始め、この厚みがまさに残留キャリアによるスクリーニング長と考えられる。以前に内部電場の強度とキャリア密度から見積もられたスクリーニング長とは良い一致を示しており、伝導測定では測定困難な深さ方向のキャリアの情報を捉えた研究と言える。
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Research Products
(3 results)