2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体人工構造における空間分離2次元電子正孔系の物質相
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09J03735
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 卓也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁性体 / 非線形光学応答 / 半導体 |
Research Abstract |
平導体天工構造の電子正孔系の物質相の制御による新しい光機能開拓の研究を進める中で、従来議論されていなかった新しいスキームの非線形光学効果について、あらたな視点を自ら見いだし、当該年度においてその研究を深めることが出来た。特に、磁性体の磁気光学応答において重要な知見を見出し、重要な成果が得られた。 1.結晶が持つ離散的な回転対称性によって、コヒーレントなラマン型の非線形光学応答による光誘起磁化過程において角運動量保存則が重要な役割を果たすことを群論的考察により明らかにした。結晶は離散対称性をもつために、結晶角運動量のやり取りもその対称性に応じた離散的な値をもってやり取りが行われることになる。このことはウムクラップ過程の角運動量版とも言うべき現象である。これは特定の結晶系に限らず非常に一般的かつ基本的な概念であり、今後の光磁気相互作用の研究において重要な役割を果たすことが期待される。 2.光の持つ角運動量が非線形光学過程においてどのように物質に転写されるかについて、一般的な考察をすすめた。上記の選択則に基づいた議論からは、偏光状態の定まったひとつの光パルスを用いた場合、ラマン過程によって光のもつスピン角運動量を直接磁化に転写することができないことがわかる。これはある量の角運動量を転写する過程がある場合、必ずそれと逆符号で同じ大きさの角運動量転写過程が存在してしまうからである。この困難を解決するために、偏光状態の異なる二つの光パルスを作成し、その偏光状態とパルス間隔を調整することで、角運動量が実効的に転写されるような手法を考案した。来年度にその議論を反映した研究の進展が期待できる。 3.酸化亜鉛量子井戸の光学応答に関しては研究室移転に伴う実験装置の再立ち上げなどを行っており、最終年度での研究課題の遂行完了に向けて着実に準備を進めている。
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Research Products
(2 results)