2011 Fiscal Year Annual Research Report
動物“パーソナリティ"の測定とその生物学的基盤に関する研究
Project/Area Number |
09J03762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今野 晃嗣 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 性格 / 遺伝子多型 / イヌ / アンドロゲン受容体 / 日本在来犬 / 犬種差 / 注視 / ゾウ |
Research Abstract |
本研究は広範な動物において観察され得る「パーソナリティ(以下、性格と表記する)」の生物学的基盤を解明することを目的としていた。第一の課題は、イヌの性格と遺伝子多型の関連解析である。日本在来犬の秋田犬の機能遺伝子の多様性について調べた結果、アンドロゲン受容体遺伝子(AR)、ドーパミン受容体D4遺伝子exon1、セロトニン受容体1A遺伝子といった各遺伝子領域において多様性が高かった。各個体の性格スコアと遺伝子多型との関連解析を行ったところ、オスの赤毛の秋田犬においてARの短い対立遺伝子を持つ個体の方が長い対立遺伝子を持つ個体よりも「攻撃性」が高いことが明らかになった。第二の課題として、イヌにおけるヒトに対する注視行動の犬種差について検討した。イヌの視線利用行動を評価する行動実験の結果、秋田犬は他の純粋犬種と比べて問題解決場面においてヒトへの注視行動が持続されないことが分かった。第三の課題は、大型野生哺乳類の性格測定法の検討である。本年度は飼育下のアジアゾウとアフリカゾウの性格測定とその遺伝的基盤の同定の研究に携わった。遺伝子解析の結果、アンドロゲン受容体遺伝子(AR)や神経生成に関与するASH1(Achaete-scute homologs 1)遺伝子といった機能遺伝子においてアジアゾウとアフリカゾウで種差や種内変異があることが分かった。飼育員による性格評価と各個体の遺伝子型との関連解析を行ったところ、アジアゾウにおいて長いタイプのASH1遺伝子を持つ個体の方が「神経症傾向」が高い可能性が示された。以上の性格や行動に関する研究は、動物の個性の比較研究の先駆的な役割を果たすと考えられる。
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