2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J03815
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平島 剛志 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2) (10620198)
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Keywords | 分岐形態形成 / 数理モデル / シグナル制御 / MAPK / Cellular Potts Model / 腎管芽発生 |
Research Abstract |
器官の分岐形態形成で観察されるシグナル制御と組織形状の変形に関する2つのテーマに対し数理モデルを構築して研究を行った。年度の前半は、ショウジョウバエの初期発生に関わる分裂促進活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)のシグナル遡及効果の研究に専念した。シグナル遡及効果とは、ある反応経路の下流因子が上流に位置する反応ネットワークモジュールに対して影響を与える効果のことである。本研究は、プリンストン大学のStanislav Shvartsman教授と大学院生のYoosik Kim氏との共同研究で、in vivoでのシグナル定量を行った後に、その機構を説明する数理モデルを構築した。数理モデルによって、系に存在するMAPK経路下流の基質量の増加に伴うMAPKリン酸活性度の増減が、基質とMAPKとの解離定数やMAPK経路が持つ化学反応の性質に依存することを明らかにし、実験観察と一致することを示した。また、シグナル遡及効果が分岐形態形成においても重要な点を議論した。本研究の成果は論文に取りまとめられ、現在投稿中である。上述した研究と並行して、ほ乳類の腎臓発生時に観察される腎管芽の突起形状形成を対象に遺伝学的手法と数理的手法を用いて研究を行った。本研究はコロンビア大学のFrank Constantini教授とOdysee Michos博士との共同研究である。細胞動態を表現できるCellular Potts modelを改良し空間三次元でのシミュレーションを行い、特定の条件下では突起が多数引き起こされることが分かった。コンピュテーショナルモデルから得た結果と、遺伝学的な実験によって作製された変異体の表現型を比べることによって、特定の突起の数を形成するための条件を提示した。現在、本研究の結果を取りまとめていて投稿の準備をしている。本研究は、遺伝学的手法と数理的手法を用いて腎臓の器官形成の理解を試みる画期的な研究である。
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