2010 Fiscal Year Annual Research Report
ジェット変貌効果をプローブとしたクォーク・グルオン・プラズマ物性の研究
Project/Area Number |
09J03884
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 正人 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高エネルギー重イオン衝突実験 / ALICE / LHC / クォーク・グルオン・プラズマ / 方位角異方性 / ジェット変貌効果 |
Research Abstract |
CERN-LHC加速器を用いたALICE実験において、世界最高エネルギーでの鉛・鉛原子核衝突実験(核子対あたり重心系エネルギー2.76TeV)、および陽子・陽子衝突実験(重心系エネルギー7TeV)を行った。申請時の計画と比較すると、LHC加速器のトラブルにより、約1年遅れでの実験であったが、順調にデータを収集することが出来た。 ジェット変貌効果をプローブとしたQGP物性の研究において、まずは、用いるジェットの性質を理解する事が重要となるため、7TeV陽子・陽子衝突実験データを、二粒子方位角相関の粒子多重度依存性に着目して解析し、日本物理学会において報告した。この解析は、本研究課題に用いるプローブの理解だけでなく、重イオン衝突実験データの解析における比較対象の理解という重要な意味を持つ。 重イオン衝突実験データの解析については、現在までに、荷電粒子の方位角異方性の測定を行い、その結果を日本物理学会において報告を行った。方位角異方性は、重イオン衝突における初期状態の性質を反映した測定量として注目されており、先行実験であるRHICでは、相対論的流体力学模型により良く説明されている。しかし、QGP物性の理解には、様々なエネルギー領域、システムにおける統一的理解が重要であり、この意味に於いて、RHICに比べ、十倍以上もの衝突エネルギーを用いるLHCでの楕円的方位角異方性測定は、流体力学模型による記述の妥当性をテストするだけでなく、QGPの状態方程式や粘性といった熱力学的性質を理解する上で非常に重要である。さらに、ジェット変貌効果には、QGP中を通過する事によるジェット自体の変化だけでなく、QGPの流体的性質に起因する方位角異方性との重ね合わせ、もしくは相互作用の結果として、観測されると考えられるため、本研究課題の遂行において、粒子方位角異方性の測定は必要不可欠である。
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Research Products
(14 results)