2009 Fiscal Year Annual Research Report
多レベル内容理論に基づく知覚経験の内容の哲学的研究
Project/Area Number |
09J03904
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤川 直也 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 概念的内容 / 非概念的内容 / 知覚経験 / マイノング主義 / 矛盾許容論理 |
Research Abstract |
(A)知覚経験の概念性/非概念性を示す論証における概念性/非概念性の区別の基準の研究: 本研究では、知覚経験が非概念的であるとする主要な議論に注目し、それらにおいて概念的/非概念的の区別がそもそもどのような基準に基づいてなされているのかに関して整理、分類し、概念的/非概念的の区別が文献中でいまだ統一的な理解を得られていないということを確認した。特に、知覚経験が信念と推論的関係に立たない(cf.ミュラー・リヤー錯視)ということを指摘する「信念からの独立性論法」が用いる基準、知覚経験の内容がときに矛盾したものでありうる(cf.滝の錯視)ということを指摘する「矛盾許容可能性論法」、知覚経験の内容は特定の文脈から切り離すことができないということを指摘する「文脈依存性論法」が用いる基準、知覚経験の内容が主体の概念レパートリーよりきめが細かいと論じる「きめ細やかさ論法」、知覚経験は概念的能力をもたない幼児や高等動物にも生じるはずだと論じる「連続性論法」が用いる基準、の三つの基準の相違を確認した。 (B)マイノング主義的対象存在論の研究: 視覚経験の重要な特徴に、幻覚、錯覚の存在が示すように、ときにそれはveridicalでなく、また、滝の錯視の事例が示すように、ときに矛盾を含むものでありうる、ということが挙げられる。本研究では、知覚経験の内容のこれらの特徴を整合的に理解するための基礎的な研究として、いわゆるマイノング主義に関する研究を行った。とりわけ、特徴づけ原理と呼ばれるマイノング主義の原理に注目し、現代のマイノング主義理論が、非存在対象や矛盾した対象を、真性の矛盾や偽を生じないように無害化する、あるいは現実世界以外での存在性と現実世界での非存在性や、矛盾許容論理による矛盾の隔離によって、処理する方法を提出しているということを確認した。
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Research Products
(1 results)