2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの脳の進化的基盤:胎児期からたどる大脳化の由来
Project/Area Number |
09J03916
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 朋子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 人類進化 / 胎児 / チンパンジー / 脳イメージング / 脳発達 / ヒト / マカクザル / 霊長類 |
Research Abstract |
本研究は、イメージング技術を用いてヒト胎児標本、チンパンジー胎児標本、マカクザル胎児標本を対象に、胎児期における大脳の内部構造の発達過程を明らかにすることを目指した。そして、これらの結果を種間比較することで、人類進化における、大脳の内部構造の発達様式に関する霊長類全般の共通性、大型類人猿とヒトとの共通性、そしてヒトの特異性を理解することを目的とした。 本年度は、京都大学医学研究科附属先天解析異常標本センターが管理する1.5テスラのマイクロMRIを用いて大脳の内部構造を観測するための基盤的技術を確立した。これにより、マカク胎児の脳標本を対象とした撮像を可能とした。また、(株)三和化学研究所チンパンジー・サンクチュアリ・宇土が所有するチンパンジー胎児標本を対象に、3テスラの臨床用MRIを用いて、脳白質神経構造の観測に成功した。当初の予定通り、申請者はヒト、チンパンジー、マカクザルにおける胎児期の大脳の内部構造を種間比較するための基盤的データおよび基盤的技術がほぼ整備された段階に到達した。この成果は国内2件、国際2件の学会発表として公表した。 さらに、本研究において重要なコントロールデータとなる、チンパンジーにおける乳幼児期から子ども期までの大脳の灰白質容積と白質容積の発達的変化に関する結果を、富山大学医学薬学研究部の研究によるヒトのデータ、North Carolina大学およびGeorgetown大学の研究によるマカクザルのデータと比較した。その結果、ヒトの早期乳児期における大脳の灰白質/白質の比率は、チンパンジーよりも著しく高く、その比率は乳児期において劇的に減少した。つまり、胎児期を含めた早期乳児期以前における種間脳の内部構造の特異性、それ以降の乳児期における脳構造の動的な発達様式がヒトの大脳化をもたらした一つの要因である可能性を示唆した。この成果は現在国際誌に投稿中である。
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[Presentation] Longitudinal development of volumetric cerebral asymmetries of chimpan zees.2010
Author(s)
Makishima Haruyuki, Sakai Tomoko, Mikami Akichika, Hirai Daichi, Nishimura Takeshi, Suzuki Juri, Hamada Yuzuru, Tomonaga Msaki, Tanaka Masamichi, Miyabe Takako, Nakatsukasa Masato, Matsuzawa Tetsuro
Organizer
International Primatological Society 2010 Congress
Place of Presentation
京都大学(京都府)
Year and Date
2010-09-13
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