2009 Fiscal Year Annual Research Report
紅藻Cyanidium caldarium由来光化学系II複合体のX線結晶構造解
Project/Area Number |
09J03958
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
足立 秀行 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 膜タンパク質 / 光合成 / X線結晶構造解析 / 光化学系II / 酸素発生 / 紅藻 |
Research Abstract |
本研究の目的は紅藻Cyanidium caldariumを用いて、真核生物の光化学系II(PSII)複合体の結晶構造を明らかにすることである。それにより真核生物におけるPSIIの構造と機能を解明するとともに、原核生物PSIIの構造との違いと進化に伴うPSII構造の最適化の過程を明らかにする。さらに高分解能でのPSIIの構造解析を行い、酸素発生反応を触媒しているMn4Caクラスターの詳細な構造と、酸素発生反応のメカニズムを解明する。これらを遂行するため、今年度では結晶の分解能の向上と位相取得のための重原子同型置換体作成を行った。 分解能の向上のため、精製方法・結晶化条件の改良、結晶の脱水処理条件の最適化を図った。精製では純度向上のため、再結晶化の手法を取り入れ、大量スケールで結晶化を行い、結晶のみを回収し、溶解した。この手順を繰り返すことにより、以前より高い再現性で高純度のPSII標品を得ることに成功した。紅藻PSII結晶では、結晶中の水分子を少なくし、結晶中のタンパク質分子のパッキングを密にする脱水処理を行い3.7Å分解能の回折データを得ている。この脱水処理の手法・溶媒の組成を最適化し、2.9Å分解能の回折データを収集することに成功した。この回折データは現在報告されているシアノバクテリア由来のPSII構造と同等の分解能であり、詳細な紅藻PSII構造の解明に向けた大きな進展が得られた。 位相情報取得用の重原子誘導体を作成するため、各種重原子のスクリーニングを行った。その結果、紅藻PSII結晶に適した重原子化合物を絞り込むことができ、Ta化合物を付加させた結晶のX線回折実験により6Åの初期位相を得ることに成功した。
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