2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代イスラーム金融のグローバル化と金融手法の多元的展開をめぐる研究
Project/Area Number |
09J04130
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長岡 慎介 Kyoto University, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | イスラーム金融 / イスラーム経済論 / 環インド洋経済 |
Research Abstract |
本年度は、90年代~2000年代のイスラーム金融手法の開発過程において交わされた議論の動向やその地域的多様性について先行研究のレビューおよび現地調査(資料収集、当事者への聞き取り調査)を行った。1990年代以降、イスラーム金融の現場で用いられる金融手法については、中東と東南アジア(特にマレーシア)の間で大きな差異が見られることが多くの先行研究で指摘されているが、現地調査の結果、1990年代については、先行研究の妥当性を自ら確認することができた。すなわち、同時期にマレーシアでさかんに用いられていた金融手法(例えば、バイウ・ダインとバイウ・イーナ)は、中東地域では、イスラーム法学者が、そのような金融手法はイスラーム的に望ましくないと批判したこともあって、同地域のイスラーム金融機関ではほとんど用いられることがなかった。ところが、2000年代については、マレーシアにおいても従来からの金融手法の利用が減少することが観察され、その結果、1990年代と異なり、両地域(中東と東南アジア)のイスラーム金融市場で提供される金融サービスが近接する傾向にあることが明らかとなった。その要因としては、イスラーム金融のグローバル化に伴う東西市場の融合傾向が挙げられる。具体的には、マレーシアが中等地域に拠点を置くイスラーム金融機関を自国市場に呼び込むために、中東地域のイスラーム金融のあり方に歩調を合わせる動きを見せたことや、中東地域のイスラーム金融機関がマーケット拡大のために東南アジアへ積極的な事業展開を行ったことが挙げられる。
|
Research Products
(10 results)