2009 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ在来有畜農業の可能性-エチオピア高地における人-ウシ関係に着目して-
Project/Area Number |
09J04423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 利和 Kyoto University, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有畜農業 / 牛耕 / 作業能率 / ウシ / 犂軛 / エチオピア高地 / オロモ |
Research Abstract |
平成21年度は、アフリカ在来有畜農業における牛耕の実態に着目し、その発展可能性を検討した。エチオピア中央高地に位置するオロミヤ州南西ショワ県ウォリソ郡ディレディラティ村ガーグレ地区において6月から9月に行った3カ月のフィールドワークのデータと先行研究をもとに博士予備論文(修士論文に相当)を執筆した。論文では以下の3点を検討した。 (1)有畜農業における畜力利用と農業生産の関係について、文献による検討をおこない農法の特性を整理した。その中で、ヨーロッパ型の有畜農業とは異なるアフリカ型有畜農業の特徴として、エチオピアでは牧草がほとんど栽培されず、テフに代表されるイネ科作物の桿が飼料として多用されているという点を、調査地域の特性と関連づけて検討した。 (2)牛耕を構成する諸要素として、(1)ウシ、(2)農具(犂、軛)、(3)人、のそれぞれの実態と役割を分析した。その結果、(1)ウシは役牛としての能力が高いゼブ種であり、かつ飼料はテフの桿から確保できるという利点があること、(2)農具は単純構造、軽量、製造維持が容易であるという特徴をそなえていること、(3)地域住民は高度な操作能力と調教技術を有している点、を明らかにした。その上で3つの構成要素の相互作用によって実践される犂耕技術としての耕起法を明らかにした。 (3)牛耕の1日あたりの作業能率を実測値から算出した。その結果、牛耕の1日の限界作業時間は400分であることがわかった。作業時間と世帯が所有する耕地面積、および耕作可能日数の関係を勘案して、在来牛耕の効率に関する分析を行った。その結果、調査対象世帯においては、現在飼養されている2頭1組以上の去勢牛を利用することで、理論的には実際に耕した面積の1.6倍から5.6倍がさらに期間内に耕作可能であることが示された。つまり、耕作可能な期間内に、世帯が所有する耕作地をすべて余裕をもって耕せていることが示された。また、牛耕の余剰耕起力が、畜力をもたない世帯に配分されていることも明らかになった。
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Research Products
(1 results)