2009 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウイルスによる宿主乗っ取り戦略-宿主遺伝子転写シャットオフ機構の解明-
Project/Area Number |
09J04586
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 大輔 Hokkaido University, 大学院・農学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | バキュロウイルス / BmNPV / hr5 / shut off |
Research Abstract |
本研究の目的は、バキュロウイルス感染細胞で見られる宿主遺伝子特異的発現(転写)抑制(shut off)機構を解明することである。これまでの研究によりバキュロウイルスの持つエンハンサーであるhr5を付加することにより宿主細胞ゲノム中にshut offを回避できる領域を作製することが可能であった。shut offは転写段階で起こり、かつ宿主遺伝子の大部分に同時に作用することが報告されている。本年度は、shut offの機構は『宿主ゲノムのヘテロクロマチン化』によって引き起こされているのではないかという作業仮説を立て、その検証を行った。近年の研究によりゲノムのヘテロクロマチン化にはDNAのメチル化やヒストン修飾が関与していることが報告されている。カイコのゲノムにおいては哺乳類などのゲノムとは異なり、DNAのメチル化の程度が低いことが報告されていることから、ヒストン修飾に焦点を絞り研究を行った。遺伝子発現が活性化している領域に多く見られるヒストン修飾としてはヒストンH3のアセチル化やヒストンH3K4のメチル化があげられる。一方、遺伝子発現が抑制されている領域に多くみられるヒストン修飾としてはヒストンH3K9のメチル化やヒストンH3K27のメチル化があげられる。そこでこれらのヒストン修飾を特異的に認識する抗体を用いてChromatin imuunoprecipitation assayを行った。その結果、shut offを受けている領域と受けていない領域においてヒストン修飾に違いがみられず、かつ、ウイルス感染により修飾状態の変化は認められなかった。バキュロウイルス感染によるshut off機構は上記のようなヒストン修飾を介したヘテロクロマチン化ではないことが判明した。今後はhr5と相互作用する因子について解析を進める。
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