2009 Fiscal Year Annual Research Report
ゴング文化を通して見る「伝統」の継承と変容―ベトナム中部高原の事例から―
Project/Area Number |
09J04616
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳沢 英輔 Kyoto University, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ゴング / ベトナム / 銅鑼 / 音文化 / 青銅楽器 / 調律師 / マルチメディア / フィールドワーク |
Research Abstract |
平成21年度前半期は、2006年~2008年にかけて行ったフィールド調査で収集したデータをもとに、論文2本を執筆し、学術雑誌に投稿した。「アジア・アフリカ地域研究」第9-1号に掲載された論文では、ベトナム中部高原コントゥム周辺において、現在、伝統的なゴング演奏と、西洋音楽やキリスト教の影響を受けた「改良ゴングアンサンブル」が共存していることを指摘した。また両者の演奏形態・旋律を比較考察し、後者が誕生した社会背景について検討した。「民族藝術」第26号に掲載された論文では、先行研究ではほとんど検討されてこなかったが、当該文化を理解する上でとても重要な「ゴングの調律」に着目した。現地住民への聞き取りから得たデータだけでなく、調律前後のゴング音の音響スペクトルを分析して調律の効果を示すことで、ゴング調律師が「ゴングの価値」を創る存在であることを明らかにした。 また11月には、京都大学総合博物館学術映像博2009において、「音」に焦点を当てたワークショップを企画した。ワークショップでは国際的に著名な作曲家・インターメディアアーティストのフィル・ニブロック氏を招へいし、氏のパフォーマンス、音文化研究者による発表、ディスカッションを行った。報告者は、ゴングの調律と価値イメージに着目した発表を行った。年度末に提出し受理された学位論文では、ベトナム中部高原のゴング文化研究を事例として、マルチメディア(音響・映像情報)を活用した新たな地域研究の方法論を提示し、画期的な成果として高い評価を得た。
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Research Products
(4 results)