2010 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞の老化における分子機構の解明と不妊治療に向けての応用研究
Project/Area Number |
09J04747
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村木 美帆 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生殖細胞 / 老化 / GSTT1 / 高齢不妊 |
Research Abstract |
一般的に、加齢にともない抗酸化物質が減少し、抗酸化ストレス作用を有するGSTの発現量は加齢によって減少すると考えられてきた。しかし、ヒト顆粒膜細胞においてGSTT1を除く全てのGSTの発現量が加齢によって減少していることが示され、GSTT1が生殖細胞に特異的な高齢不妊マーカーとなりうることが示された。そこで、本研究において卵子や顆粒膜細胞におけるGSTT1の機能および加齢により発現が亢進する理由を明らかにし、生殖細胞の老化における分子機構の解明並びに、将来的な不妊検査や治療法の開発に役立つことを目的とし研究を進めてきた。今年度の研究結果において、一つ目に、マウス卵子におけるGSTT1の発現抑制系・過剰発現系を作出した。前年度はGSTT1のアンチセンスRNAを用いて発現抑制を試みたが、抑制率が悪かったため、siRNAを用いて抑制系を作製した。その結果、GSTT1を抑制させた方が初期胚の発生率が向上することが明らかとなった。現在、若齢及び高齢マウスの卵子を用いてさらに検討中である。また、過剰発現系においては、FLAGタグ付きのベクターを構築し、受精卵に注入したが、コントロールや無処置の受精卵と初期発生において変化が見られなかった。そのため、現在高齢マウスの受精卵を用いて検討中である。二つ目に、GSTT1は他のGSTと異なり、転写因子であるNrf2に転写制御を受けていないことが示唆された。酸化ストレスなどの様々なストレスによって動くMAPキナーゼがあるが、p38はこれらのカスケードの中心的な役割を担っている。以前の実験より、GSTT1はp38と同様な発現パターンをすることが示され、GSTT1はp38に発現制御を受けている可能性も考えられる。よって、現在P38の下流にあるGATA-4、ATF2などの転写因子の発現においても検討中である。三つ目に、体細胞(培養細胞)におけるGSTT1の抑制系においては、前年度はレンチウイルス法を用いて作製を試みたが、ウイルスの産生率が低く失敗に終わってしまった。しかし、改善法により再度その手法で行う予定である。
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