2009 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性体/半導体ハイブリッド構造を用いたスピン回路の実現
Project/Area Number |
09J04834
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
国橋 要司 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピン軌道相互作用 / 量子細線 / 弱反局在現象 / モンテカルロシミュレーション / スピントロニクス |
Research Abstract |
微細加工の限界により,半導体集積化技術の発展は近年飽和を迎えることが予測されている.我々が研究課題とする強磁性体/半導体ハイブリッド構造を用いたスピン回路は電子スピンを新たに情報担体として用い,省電力,省エネルギーを実現しつつ.かつ膨大な情報を輸送することが可能となる画期的なデバイスコンセプトに基づく.電子スピンを情報担体として用いるためには,スピン緩和時間が極めて長い伝導チャネルを作製することが極めて重要となる.この技術的課題を克服するために,我々は狭ギャップ半導体ヘテロ構造中において二つの異なるスピン軌道相互作用(RashbaおよびDresselhausスピン軌道相互作用)が等しいときに生じる一軸配向した有効磁場に注目した.本来,有効磁場はスピンの回転制御に有用であるが,電子の運動量に依存して方向や大きさを変化させるため,電子の多重散乱によってスピン緩和をもたらす.しかしながら,Rashbaのスピン軌道相互作用を電界で制御し,Dresselhausのスピン軌道相互作用と等しくすることで実現できる,有効磁場の一軸配向状態では,電子スピンの歳差運動軸が一定であるため,多重散乱を受けても電子スピンが緩和することはない. 特別研究員初年度にあたる平成21年度は,この一軸配向した有効磁場を作り出すのに最適な系をk・p摂動法に基づいたバンド計算から理論的に予測し,電子線リソグラフィを用いて作製した量子細線構造を用いた実験から有効磁場が一軸配向したことによるスピン緩和時間の増大を観測することに成功した. さらに我々はMonte Carlo法に基づくシミュレーションを行い,細線中におけるスピン緩和時間の異方性が有効磁場の角度分布を考慮することで定性的に説明できることを見出した.以上の研究においでスピン回路を構築するためのスピン制御に関する多くの基礎的な知見が得られた.
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Research Products
(12 results)