2009 Fiscal Year Annual Research Report
味細胞系譜を特徴づける新規シグナル遺伝子の解析と味覚分子マーカーの開発
Project/Area Number |
09J04908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 あずさ The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | taste / microarray / in situ hybridization |
Research Abstract |
味覚研究の基盤となる味覚の分子機構の解析はいまだに不十分である。例えば、5つの基本味の1つであり、私たちの健康とも直結する塩味の受容体は当研究開始の際には不明であった。平成21年度中に塩味受容体の候補分子の報告があったものの、塩味の受容伝達機構には他の経路が存在する事を示唆する内容であり、下流の経路なども不明である。他の味についても味受容細胞から味神経への連絡の仕組みの研究はほとんどない。 本研究では、モデル生物の味蕾や味神経、またその対照組織における遺伝子発現解析データを用いて味蕾の機能に関わる新規分子を取得し、またその機能解析を行うことにより、味覚のメカニズムを解明することを目的とする。とりわけ、塩味の受容伝達機構に焦点を絞って解析を行っている。 まず、味蕾における新規機能分子の候補を得るために、特定の味を受容する味蕾細胞に特異的に発現する遺伝子のデータを得た。具体的には、味蕾における細胞種のバランスが通常と異なる遺伝子改変マウスの味蕾やその周辺組織についてDNAマイクロアレイ解析を行い、得られた遺伝子発現データを野生型のものと比較して目的とする遺伝子を抽出した。得られた遺伝子については、その細胞特異的な発現をRT-PCR,舌切片を用いたin situ hybridizationや免疫染色などの組織染色により確認した。また、既知の味覚受容体・シグナル分子と二重染色を行ってその発現相関を調ベ、新規遺伝子が既知の味覚受容体を発現しない細胞群、すなわち塩味受容細胞として最も有力視される細胞群に発現することを示した。 さらデータベースサーチを行うことにより得られた遺伝子の機能予測を行い、新規遺伝子の1つがイオンチャネルであることを見出し、以降の機能解析を行うことにした。現在、野生型マウスを用いてチャネルの阻害剤を各種の味溶液に加えて味溶液に対する応答の変化を観察する実験を行っている。
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