2011 Fiscal Year Annual Research Report
味細胞系譜を特徴づける新規シグナル遺伝子の解析と味覚分子マーカーの開発
Project/Area Number |
09J04908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 あずさ 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 味覚 / DNAマイクロアレイ解析 / in situ hybridization |
Research Abstract |
本研究では、モデル生物の味蕾や味神経、またその対象組織における遺伝子発現解析データを用いて味蕾の機能に関与する新規分子を取得し、またその機能解析を行うことにより、味覚のメカニズムを解明することを目的としている。昨年までは塩味の受容伝達機構に焦点を絞った解析を行っていたが、本年は酸味の伝達機構や味神経と味蕾の接続に関しても解析を行った。 当研究室で開発したSkn-1ノックアウトマウスという遺伝子改変マウスを用いて実験を行った。Skn-1ノックアウトマウスは味蕾細胞種の割合が変化しており、これを野生型と比較することで細胞種特異的に機能する遺伝子を効率よく取得できる。DNAマイクロアレイ解析を行って特定の味を受容する味蕾細胞に特異的に発現する遺伝子のデータを取得し、その細胞種特異的な発現をRT-PCRや舌切片を用いたin situ hybridizationや免疫染色により確認した。既知の味覚受容体やシグナル分子と二重染色を行ってその発現相関を調べた。この手法により、味蕾と味神経の接続を行う分子の候補として5遺伝子が得られた。また、酸味受容細胞に特異的に発現する遺伝子を調べた結果、いくつかの情報伝達分子が挙がった。これらのうちシナプス関連因子の1つについて、ノックアウトマウスを用いて味覚応答行動解析および神経応答解析をおこなったところ、ノックアウトマウスでは酸味に対する閾値が上昇しており、酸味に対する応答が鈍くなっていると考えられる。酸味の伝達に関与する因子を特定することができた。 酸味の受容・伝達に関しては不明な点が多く残されており、その解明の一端となる知見を得ることができた。今後は酸味のマスキング物質の開発など、食品・医療分野への応用が期待できると考えられる。
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Research Products
(2 results)