2009 Fiscal Year Annual Research Report
チタン基生体用形状記憶合金の内部組織制御及び特性改善
Project/Area Number |
09J05200
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸部 裕史 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チタン合金 / 形状記憶合金 / 生体材料 / 集合組織 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生体に安全な元素のみで構成されたβ型Ti基生体用形状記憶合金に対し、内部組織制御による特性改善技術を確立することである。本年度は、圧延により形成される加工集合組織を調べ、加工集合組織の形成に影響を及ぼす因子を特定することを目指した。Tiにβ相安定化元素としてNbまたはTaを添加したTi-Nb二元系合金およびTi-Ta二元系合金を作製し、室温において圧延加工を施した。どちらの合金も加工性に優れており、室温で98%以上の圧延加工が可能であった。合金のNbまたはTaの濃度を増加させると、マルテンサイト変態開始温度(M_s)の低下や、母相(β相,bcc)およびマルテンサイト相(α"相,orthorhombic)の格子定数の変化をもたらす。加工集合組織を測定した結果、M_sが室温より低く圧延時にβ相で塑性変形が起こる組成の場合、Ti-Nb合金、Ti-Ta合金共に強い{001}_β<110>_β加工集合組織が形成されることがわかった。一方、M_sが室温程度あるいは室温より高く圧延時にα"相で塑性変形が起こる組成の場合、NbまたはTaの濃度が高い場合は強い(100)_<α">[0101]_<α">加工集合組織が形成されるが、NbまたはTaの濃度が低くなるにつれ、加工集合組織は弱いものになっていくことがわかった。このようなα"相の加工集合組織におけるNbまたはTa濃度依存性は、NbまたはTa濃度の変化がもたらすα"相の格子定数変化と、それによる塑性変形モードの変化によるものであると結論づけた。以上まとめると、β型Ti基生体用形状記憶合金に形成される加工集合組織には、添加したβ相安定化元素の種類や濃度ではなく母相とマルテンサイト相の相安定性および格子定数が強く影響していることがわかった。
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