2010 Fiscal Year Annual Research Report
チタン基生体用形状記憶合金の内部組織制御及び特性改善
Project/Area Number |
09J05200
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸部 裕史 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | チタン合金 / 生体材料 / マルテンサイト変態 / 形状記憶合金 / 変形機構 |
Research Abstract |
前年度の研究においては、β型Ti基形状記憶合金の加工集合組織形成に影響を及ぼす因子を調べ、母相(β相,bcc)とマルテンサイト相(α"相,orthorhombic)の相安定性および格子定数が大きく影響していることを明らかとした。そこで本年度では、それら相安定性および格子定数を変化させたβ型Ti基合金を作製し、それぞれの合金がどのような変形モードによって塑性変形を生じるのかを調べ、相安定性および格子定数と変形モードとの関連性について明らかにすることを目指した。Tiにβ相安定化元素としてNbを添加したTi-Nb二元系合金をアーク溶解により作製した。合金のNb濃度を変化させることで、母相とマルテンサイト相の相安定性およびそれらの格子定数を変化させることができる。作製した合金に対し、室温での引っ張り試験によって塑性変形を生じさせた後、透過型電子顕微鏡による変形組織観察を行った。Ti-30Nb(at.%)合金は室温でβ相単相であり、引っ張り変形後の試料には多数の<111>_β転位が観察された。一方、室温でα"相単相であるTi-20Nb(at.%)合金においては、引っ張り変形後の試料に多数の変形双晶が観察された。α"相の格子定数を用い、観察された双晶のせん断歪み量を計算したところ、いずれも小さな値であり活動しやすい双晶であることがわかった。さらに、観察された変形双晶のうち{130}_<α^">。・複合双晶および{110}_<α^">複合双晶に関しては、合金のNb濃度が減少するにつれ観察頻度が高くなる傾向がみられた。これは、Nb濃度によってα"相の格子定数が変化することに対応して、これら複合双晶のせん断歪み量が減少するためであると結論づけた。以上のように、β型Ti基形状記憶合金の塑性変形機構を明らかにしたことが、本年度の成果である。
|