2011 Fiscal Year Annual Research Report
行動シンドロームを軸とした動物行動に関する生態学的研究
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09J05297
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中山 慧 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | パーソナリティ / 遺伝相関 / 対捕食者戦略 / 擬死 |
Research Abstract |
人の例でよく知られるように、例え年齢と性、体格が同じ人同士でも彼らの行動には一貫した違い(パーソナリティや、あるいは行動シンドロームと呼ばれる)があることがある。 捕食者に襲われた際に咄嗟に擬死(死に真似、不動)行動をする動物は分類群を問わず多く存在する。申請者の一連の研究は、主に昆虫(ヒラタコクヌストモドキ、コクヌストモドキ及びアズキゾウムシ)を材料として、こうした動物の擬死行動に関する進化行動生態学的研究を、形質間の相関、特に動物のパーソナリティという観点から展開している。 昨年度は当初の計画通り、擬死行動と活動性の負の遺伝相関を同定するため、歩行活動性に対して選抜を行った際に、擬死行動にどのような相関反応が生じるのかを調べるための人為選択実験系をコクヌストモドキで立ち上げた。当初予測されていた通り、歩行活動性に対して直接選択がかかると、擬死行動をする傾向において選択への相関反応が生じることが確認された。歩行活動性に低い系統では、外部指摘に対して擬死をする傾向が高くなった。本来ならこれに加え、生活史形質等における、選択への相関反応についても調査する予定であったが、歩行活動性に対する選択実験が今なお進行中なため、これについては次回の課題として持ち越す。いずれにしても、行動形質間同士の遺伝相関を、選択に対する直接・相関反応を調べるとことで明確に示した研究は世界的に見て極めて稀であり、この研究成果の発表は、動物のパーソナリティの進化に関する研究において非常に有用なモデルケースとして認識されると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、歩行活動量への選択が種々の行動形質(及び生活史形質)に及ぼす遺伝的影響について調査する予定であったが、実験に用いる予定であった歩行活動性の高い<H>系統、低い<L>系統の確立に現時点ではまだ至っていないため(選抜実験継続中のため)、計画の延期を余儀なくされため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、擬死時間への人為分断選抜実験によって既に確立されている、擬死時間が長く擬死率の高い系統と、擬死時間が短く擬死率の低い系統を用いて、擬死と歩行活動性の遺伝相関の生理的・分子生物的メカニズムの解明に関する研究を展開していく予定である。また、これまでの研究を通じて得られた擬死と歩行活動性の遺伝相関についての様々な進化行動生態学的特性を統合し、この遺伝相関をモデルにした動物のパーソナリティの維持とその進化についての遺伝モデル等の構築についても、今後試みていきたい。
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