2010 Fiscal Year Annual Research Report
転写産物の大規模解析に基づく新規非コードRNAの発見,及び機能解析
Project/Area Number |
09J05312
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松井 求 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非コードRNA / 大腸菌 / 次世代シーケンサ / カタボライト抑制 / キシロース代謝 / 分子生物学 |
Research Abstract |
今年度の研究目標は,糖源を変えた場合の遺伝子発現の変化を大腸菌,及びその近縁種において比較することにより,カタボライト抑制に関連した遺伝子群について進化的な考察を行うことであった.まず,ゲノムが解読された1200種以上のバクテリアゲノム情報を用いて,カタボライト抑制に関わる遺伝子群の保存性を調べた.従来,グラム陰性菌はCRP依存型,グラム陽性菌はCre配列依存型といったように,カタボライト抑制は独立した制御システムによってなされているものであると理解されてきた.しかしながら今回の解析の結果,その両方の遺伝子群を持つ種や,逆に,大腸菌や枯草菌と同じような環境に住む近縁種においてもどちらの遺伝子群も保存されていない種が存在することが明らかになった.これはそれぞれの制御システムが進化的に独立に獲得されてきたものではないこと,また知られているカタボライト抑制のシステム以外にも未知のシステムが存在することを示唆するものである.これまでの我々の研究によってカタボライト抑制と関連した新規非コードRNAが明らかになっているが,それに加えカタボライト抑制の制御システム自体が,糖源の切り替えの効率に大きな影響を与えていると考えられる.今後,トランスクリプトームと制御システムの関連性について研究を進めたいと考える.最後に,これらの成果をWeb上で観覧可能なデータベース(E. coli small RNA Browser; ECSBrowser)としてまとめた.このデータベースは大腸菌の新規転写単位とその転写プロアフィルをまとめただけではなく,既知の全遺伝子情報コンセンサス配列情報,全ゲノム領域の転写プロファイル等を含む総合データベースである.とくに実験的に検証された全てのsmall RNAの情報を含む初のデータベースであり,今後の研究への応用が期待される.
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