2011 Fiscal Year Annual Research Report
CXCR4拮抗剤を基盤とする新規二価結合型癌転移抑制剤の開発
Project/Area Number |
09J05336
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 智博 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | CXCR4 / ポリプロリンリンカー / 近赤外蛍光団 / 二価結合型リガンド / がん細胞 / イメージング / コンジュゲート / ペプチド |
Research Abstract |
申請者は、昨年度までにCXCR4のリガンドであるFC131をポリプロリンリンカーで架橋した二価結合型リガンドががん細胞選択的な作用を示すことを細胞実験レベルで明らかにしている。そこで、最終年度は生体内における二価型リガンドの有効性を評価するため、がん細胞選択的な作用を示した二価結合型リガンドに近赤外蛍光団を導入した新規リガンドの開発を行なった。近赤外蛍光団はその吸収及び励起波長が600-800nmである蛍光団を指し、この領域の波長の光は生体内の水や有機分子の吸収を受けないため、生体を非侵襲的にイメージングすることが可能である。様々な近赤外蛍光団が報告されているが、申請者はその蛍光特性及び合成の簡便さからCy7誘導体を選択した。まず、申請者は二価結合型リガンドと合成したCy7誘導体とのコンジュゲート反応に関して、種々の検討を行なった。具体的には、1)カルボジイミド系縮合剤を用いたアミド化反応、2)ヒドロキシアミン-ケトン間におけるオキシム形成化反応、3)アジド-アルキン間におけるHuisgen反応の3種の反応について検討した。その結果、アミド化及びオキシム化反応では二価結合型リガンドのラベル化が困難であったのに対し、Cu触媒を用いたHuisgen反応においては非常に良好な収率で目的物が得られることが明らかとなった。しかしながら、得られた二価結合型リガンドの傾向特性を評価したところ、リガンドの蛍光の減少が観測された。これは、近赤外蛍光団がリガンド分子によってクエンチされることによって起こる現象であると考えられる。本研究の成果は、未だ実用化されていないがん細胞イメージングツールの開発に有用な知見を与えるものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ヘテロなリガンドを組み合わせた二価型リガンドを用いた癌転移抑制剤の開発であったが、CXCR4ホモダイマーを標的とした本二価型リガンドにおいても十分に選択的かつ強力な癌転移抑制剤となりうることが本研究の成果から明らかになった。このことから、本来の研究目的である「がん細胞選択的な新規リガンドの開発」は概ね達成されていると考えられる。更に、申請者は本研究を通じて、二価結合型リガンドを用いたがん細胞の非侵襲的な可視化の可能性も見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果から得られた問題点として、二価型リガンド及び近赤外蛍光団との相互作用によって、その蛍光強度が減少することが挙げられる。そのため、今後は導入する近赤外蛍光団の検討が必要であると考えられる。また、本研究においては合成の簡便さ及び結合活性の強度から環状ペプチドFC131を用いたが、ペプチドを構成するアミノ酸の一部(Tyr,Met)には蛍光団を消光する作用があることが知られているため、リガンドの検討も合わせて行う予定である。
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Research Products
(11 results)