2010 Fiscal Year Annual Research Report
非決定性動学モデルにおける最適性と双対性の研究とその数理経済学への応用
Project/Area Number |
09J05487
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉良 知文 九州大学, 大学院・数理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非決定性動的計画法 / 非終端型閾値確率 / satisfing approach / 限定子除去法 / 制御積分・差分方程式 / 流動性リスク / 多様な評価系 |
Research Abstract |
多段階の意思決定問題を効率よく解決する動的計画法の応用は多岐にわたり、経済学においてはマクロ経済動学の解析に必須のツールとなりつつあるが、扱いが比較的容易な確率的な状態推移の下での加法型期待値の最適化に限定されている。本研究は既存モデルを含むより一般的な非決定性動的計画問題を解くためのBellman方程式である制御積分方程式・制御差分方程式について議論し、数理経済学に幅広いモデルを提供することを目指している。本年度は、1.前年度に導出した「非終端型閾値制約をもつ非決定性動的計画問題」に対するBellman方程式を拡張することによって、目標達成確率最大化、流動性リスク最小化、あるいは許容範囲のリスクの下での効用最大化など、"satisfying approach"と呼ばれる現実社会における人々の行動原理に立脚した多様な評価系を広く扱えることを示した。さらに、厳密解を得るための最悪計算量が期間の長さに対して指数オーダーであることがボトルネックとなるが、閾値による枝切りを用いた効率的な解法を与えた。多重構造をもつ動的計画問題との帰着可能性については引き続き議論が必要である。2.連続変量をもつ動的計画問題は計算実行上の困難にしばしば直面することが知られているが、計算機上でシステマティックに解くための汎用ソルバーに関する従来研究は探索が容易な離散変量のみを扱う問題に焦点をあててきた。そこで、穴井宏和教授(九州大学)・岩根秀直研究員(富士通研究所)と共に、連続変量の多項式で記述される確定的動的計画問題に対して、既存の動的計画法と限定子除去法と呼ばれる数式処理(計算代数)技術を組み合わせて用いる解法を提唱し、具体例を通して厳密な最適値関数と最適政策を実時間でシンボリックに導出できることを示した。本年度の成果により、多様な動学モデルの現実問題への応用に確実に前進したといえる。
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Research Products
(10 results)