2011 Fiscal Year Annual Research Report
初期生殖細胞を制御するRNA蛋白質複合体の同定と機能解析
Project/Area Number |
09J05542
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒牧 伸弥 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 始原生殖細胞(RGC) / RNA結合蛋白質 / blimp1 / germ cell competence / マウスエピブラスト / マウス胚 / 細胞分化 |
Research Abstract |
前年度までの実験では、生殖細胞系列への分化能を失ったWnt3欠損型のエピブラスまたはES細胞から生殖細胞を分化誘導する際、wnt3aを添加することにより、生殖細胞系列への分化能(GermlineCompetence;以下GC)再獲得することを明らかにし、代表的なWntのシグナル伝達経路であるWnt/β-catenin経路の必要十分性を明らかにした。今年度の実験では、Wnt/β-cateninシグナル伝達経路の下流にGCを与えている因子(GC factor)があるとの仮説をたて、その検証をするために、Wnt/β-catenin経路の下流において発現が上昇する因子をマイクロアレイにより網羅的に探索した。その結果、スクリーニングされた遺伝子のうち最も強く発現上昇が認められた遺伝子であるT(brachyury)を、ESから誘導したエピブラスト様の細胞で強制的に発現させたところ生殖細胞マーカーであるBlimp1,Prdm14の発現が上昇した。またこの発現上昇はBMP4の培地への添加に依存して強められた。このことからTがGCの十分性をもっていることが示された。つぎに、Tの生殖細胞形成への必要条件を検証するためTノックアウトES細胞とTノックアウトマウスの解析を部こなった。TノックアウトES細胞からエピブラスト様の細胞を誘導して、BMP4依存的な生殖細胞の形成をしらべたところ、生殖細胞マーカーであるBlimp1の発現上昇はBMP4依存的に認められたものの、Prdm14の発現上昇は認められなかった。さらにTノックアウトマウスを解析したところBlimp1陽性の細胞はみとめられるもののその数がWTのマウスに比べて激減(胚日齢7.5のマウス胚)しており、その移動も明らかに異常をきたしていることがわかった。現在このTノックアウトマウスにおけるPrdm14の発現を検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生殖細胞の決定には、これまでの知見では中胚葉誘導と体細胞特異化は抑制されると考えられていたが、ごく初期の段階では、この2つの現象が生殖細胞特異化にとっても大きな役割を果たすというこれまでにない概念が明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
生殖細胞の決定は、次世代への遺伝情報を目的とした生体内でおこる細胞のリプログラミングであるが、この機構に必要十分な因子であるT遺伝子の機能を、ノックアウトマウスを用いた解析と、本研究室で開発されたES細胞からエピブラスト様の細胞を誘導する技術(2011年発表)という2つの強力なツールを用いて推進していく予定である。
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Research Products
(3 results)