2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J05578
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡辺 宙志 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | タンパク質 / 光受容 / ロドプシン / 分子動力学 / 分子シミュレーション / 計算科学 / 量子化学計算 |
Research Abstract |
本研究は生物の薄明視を司る光受容タンパク質ロドプシシの波長制御機構に関するものである。ロドプシンの吸収波長はその生物の光環境に応じた進化を遂げている。しかしながら分子レベルでどのように生物種毎に固有の光波長選択性を実現するメカニズムはまだ解明されていない。従って、ロドプシンの光制御機構の解明は分子レベルでの生物の進化と、人間にとっても重要な視覚の実現という2つのテーマと深く関連している。またロドプシンは構造が解けている数少ないGタンパク質共役受容体の一つとして、創薬の分野からも非常に重要なタンパク質でもある。 具体的に本研究では、長距離性と相乗性という新規の波長制御メカニズムを併せ持つアナゴロドプシンに対して、理論的な計算手法を用いて解析を行った。我々は、ホモロジーモデリング、分子動力学計算、量子力学計算などの様々な計算手法を組み合わせることで、計算機上で上記の実験結果を再現することに成功した。更に上記の計算結果を解析し、波長制御はレチナールと呼ばれる発色団分子がアミノ酸置換によって、微細に構造変化を起こすことで実現されていることを示した。この構造変化は、これまでにモデルを使って定性的に示されてはきたが、実際のタンパク質中で波長と相関を持っていることを定量的に示すことに成功した。本研究は実験的に構造未知のタンパク質に対して、計算機上で実験データを再現することに成功した点、また高精度の計算を数百回以上実行し、統計的に信頼できるデータを同分野で初めて示した点、において今後の研究へ与える影響も大きい。
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Research Products
(5 results)