2009 Fiscal Year Annual Research Report
溶液内化学過程に伴う三次元溶媒和構造のダイナミクス
Project/Area Number |
09J05652
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早木 清吾 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イオン液体 / 統計力学 / RISM-SCF法 / 溶媒和構造 / 溶媒和ダイナミクス / 分子内構造揺らぎ / Diels-Alder反応 / S_N2反応 |
Research Abstract |
イオン液体は常温で液体となる溶融塩であり、構成分子間の強いCoulomb相互作用と液体構造の不均一性の為に、分子性液体と比較して緩和時間が長く、電荷移動やプロトン移動などの超高速反応素過程において特異な溶媒和ダイナミクスを示すことが知られている。従来の有機溶媒には無い特質から応用科学の様々な分野での展開が図られているが、物理化学の研究対象としても非常に興味深い。 一方で、イオン液体の緩和時間の長さは、分子シミュレーションにおいて充分な統計平均を得るには膨大な計算コストを要するなど、理論的な扱いを困難にしている。この為、第一原理電子状態計算に基づき化学反応を扱った例は皆無であり、溶媒和ダイナミクスについても理論的な知見は殆ど得られていない。そこで、筆者は平衡統計力学に基づく解析的手法であるRISM-SCF法に着目し、統計平均の問題を克服して化学反応を扱う手法を確立した。 この手法はimidazole系イオン液体中のDiels-Alder反応及びS_N2反応に適用され、溶媒効果による生成物の選択性や活性障壁の傾向を準定量的に再現することに成功している。これらは、イオン液体中の化学反応を第一原理的に検討した初めての研究である。また、得られた溶媒和構造の解析から、イオン液体の極性は主にCoulomb相互作用と相互作用に関与する分子数とのバランスによって決まることが明らかにした。 また、イオン液体と特徴付ける要因の一つである側鎖のエントロピーを考慮するために、分子内構造揺らぎを含めたRISM法を多成分系に拡張し、溶液内における側鎖のコンフォーメーションの挙動を明らかにしている。この拡張により、イオン液体のみならず、一般的な液体中の化学反応を扱うことが可能になっている。
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