2009 Fiscal Year Annual Research Report
RNAサイレンシングを介した過敏感反応の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
09J05744
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千秋 博子 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | RNAサイレンシング / 過敏感反応(HR) / 植物ウイルス |
Research Abstract |
筆者は、先行研究より、Plantago asiatica mosaic Virus(PlAMV)がコードするTGBp1が近縁なウイルス間で最も強力なRNAサイレンシング抑制タンパク質であり、なおかつ、タバコ属植物Nicotiana benthamianaに感染した場合に、全身壊死というHRに類似した病徴を引き起こすことを明らかにしていた。そこで、これまで独立したウイルス防御機構と考えられてきたRNAサイレンシングとHRが連動して作用しているのではないかと着想し、解析を進めている。 本年度は、まず、PlAMVのTGBplのRNAサイレンシング抑制機構を詳細に解析した。これまでに報告されている植物の複数のRNAサイレンシング経路に対する影響を解析した結果、PlAMVのTGBp1は、植物に外来性遺伝子を導入することで誘導されるRNAサイレンシングと、遺伝子導入後に植物体全身に拡大する全身性RNAサイレンシングを強力に抑制した。これら2つの経路には共通してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)が必要とされることから、PlAMVのTGBp1はRdRpが作用する過程を阻害している可能性が示唆された。今後、さらにTGBp1が作用する因子を同定することによって、HRを制御するRNAサイレンシング経路の解明につながると考えられる。また、PlAMV感染時に生じる全身壊死がHRと同様の反応であるかを調べた。解析の結果、PlAMV感染部位からは、HR誘導時の指標が検出されたとともに、HR誘導に必要とされる因子が、PlAMVによる全身壊死にも必要であることを明らかにした。さらに、HRには細胞死とウイルスの増殖抑制の2つの現象が伴うが、これらの現象の誘導には関与する因子は異なることを明らかにした点は、既存のHRの概念に新たな視点を提示するものであり、非常に興味深い。
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Research Products
(5 results)