2010 Fiscal Year Annual Research Report
RNAサイレンシングを介した過敏感反応の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
09J05744
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千秋 博子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | RNAサイレンシング / 植物ウイルス / 過敏感反応(HR) |
Research Abstract |
筆者はこれまでに、強力なRNAサイレンシング抑制タンパク質(サプレッサー)をもつウイルスが、植物に感染した場合に全身壊死を引き起こすこと、さらにこの全身壊死にはHR誘導に必要とされる因子が関与していることを明らかにしてきた。そこで、これまで独立したウイルス防御機構と考えられてきたRNAサイレンシングとHRが連動して作用しているのではないかと着想し、解析を進めている。 本年度は、ウイルスのサプレッサーの発現下でのsmall RNAおよび遺伝子の発現変動を解析した。まず、強力なサプレッサーであるTGBp1,p19(タバコ属植物に全身壊死を引き起こすplantago asiatica mosaic virus,tomato bushy stunt virusのサプレッサー)形質転換植物を作製し、安定発現体を得た。次に、これらの安定発現体からRNAを抽出し、small RNAおよび遺伝子発現量を調べ、非形質転換体との比較を行った。サプレッサーによって発現が低下したsmall RNAと発現が上昇した遺伝子を照合することで、RNAサイレンシングによって発現が制御されている遺伝子が見出せると考えられ、現在データ解析を進めている。 また、本年度は、サプレッサーが未同定だったCarlavirus属のウイルスについても解析を進め、本ウイルスは2つのサプレッサーを持つことを明らかにした。複数のサプレッサーを持つウイルスの報告はこれまでほとんど無く、その機能や感染段階における役割は興味深い。今後、2つのサプレッサーの作用メカニズムを詳細に解析してきたい。さらに、本年度は、Carlavirus属と近縁なTymovirus属のpoinsettia mosaic virusのゲノム配列の解読も行った。今後、両属のウイルスのサプレッサーの比較解析を進めることによって、植物ウイルスのサプレッサー獲得進化の機構に迫りたい。
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Research Products
(3 results)