2009 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-β/ActivinシグナルとHippoシグナルのクロストークの解析
Project/Area Number |
09J05830
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神家 有斗 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Yap / TGF-β / Activin / ES細胞 |
Research Abstract |
私はSmad7がYapの細胞内局在に何らかの影響を及ぼすのではないかと考えまず、YapをHeLa細胞からクローニングし、Smad7及び他のSmadタンパクとの結合を免疫沈降法より調べた。その結果、YapはSmad7の他にもTGF-β/Activinシグナルの伝達因子であるSmad2/3にも結合するということが分かった。さらにSmad2/3に関してはTGF-βシグナルによって活性化されると、Yapとの結合が増強された。この結果から、TGF-βシグナルとHippoシグナルには何らかの相互作用があるということが示唆された。まず私は、Smad7および活性化Smad3がYapの細胞内局在に変化をもたらすかをHeLa細胞へ各タンパク質を過剰発現して免疫染色により調べたが、Smad7,Smad3いずれもYapの細胞内局在に影響を及ぼさなかった。それでは、逆にYapがTGF-βシグナルに影響を及ぼすかを調べることにした。しかし、他のグループによって、YapのホモログでYapと同様にHippoシグナルの標的因子であるTazがTGF-βシグナル依存的なSmad2/3の核内の移行を制御しており、ヒトES細胞でTazをノックダウンするとTGF-βシグナルが入らなくなることによりES細胞が未分化性を失うという報告がなされた。 以上より、Hippoシグナルの下流因子であるYapやTazとTGF-βファミリーシグナルは、特にES細胞において機能的に相互作用するということが明らかとされた。以前、我々のグループではActivinシグナルがマウスES細胞の自己増殖を亢進する作用を持つということを示していた。しかし、その詳細なメカニズムは未だ分かっていない。そこで、私はActivinシグナルがYapなどと協調してES細胞の増殖を制御しているのではないかと考え、ActivinによるマウスES細胞増殖亢進作用のメカニズムをより詳細に解析することとした。 最近、ES細胞用培地に血清の代わりにGSK3とErkのインヒビターを加えた条件(2i)では、より未分化な状態(ground state)でES細胞を維持できるという報告がなされた。私は、この無血清の状態ではよりActivinによるES細胞の増殖亢進作用が顕著になるということを見出した。現在では、Activinシグナルの抑制因子であるSmad7や、Activinの受容体(ALK-4)の恒常活性型を安定的に発現するES細胞株の樹立を試みている。
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