2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J05894
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮田 裕光 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | プランニング / 迷路 / 近赤外線分光法(NIRS) / 前頭前野 / 反応抑制 / 速読 / 文章理解 / アイカメラ |
Research Abstract |
ヒトの思考や意識の起源に行動的、神経科学的観点からアプローチするために以下の実験研究を行った。第1に、Miyata and Fujita (2008)がハトに用いたものと同様のコンピュータ画面上での迷路課題をヒト成人20名に課し、課題遂行に関連する前頭前野の神経活動を近赤外線分光法(NIRS)によって計測した。十字形の迷路課題において、試行の途中で目標地点の位置が変化した試行では、元の目標の向きに誤ってカーソルを進める誤反応がみられた。こうした誤反応試行においては、課題解決の開始後と誤反応後に計2つのピークを持つ血流変化の波形が観察された。右下前頭皮質に位置する計測チャンネルにおいて、第2ピークの賦活が有意であった。これは、誤反応後に反応を抑制および修正することに伴う認知活動を反映している可能性がある。このデータについては、昨年度に引き続いて詳細なデータ解析および論文執筆を進め、Brain Research誌に発表した。また第2に、ヒトが瞑想的意識状態(純粋意識)を通して実現しうる認知能力の可能性を探るため、速読熟達者における文章理解と眼球運動、神経活動をNIRSとアイカメラ(Tobii Eye Tracker)を使用して検討した。短編小説を一読した後で内容質問に回答するテストでは、速読熟達者が5,644字/分の高速で文章を読んだ後で、非訓練者に匹敵する設問正答率を示した事例が得られた。アイカメラのデータから、速読熟達者はほぼ水平に視線を移動させて読書していたことが示された。また、速読熟達者および非訓練者における文章読解中の後頭一頭頂皮質の神経活動および眼球運動を、NIRS-アイカメラの同時計測によって測定した。これについては、現在データ解析中である。総合して、複数の実験からヒトが持つ認知的意識の心理学的、神経学的基盤に関する新知見を得たといえ、今後の比較研究の基盤ともなると考えられる。
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Research Products
(11 results)