2010 Fiscal Year Annual Research Report
LHC加速器とATLAS検出器を用いた超対称性事象の探索およびその性質の研究
Project/Area Number |
09J06398
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 高幸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 標準理論を超える物理 / ポジトロニウム |
Research Abstract |
研究代表者は、超対称性事象の探索を目的とした研究として、LHC加速器およびATLAS検出器を用いた実験と並行してポジトロニウムを用いた小規模実験を行っている。これは電子・陽電子による重心エネルギー1MeVの衝突型加速器実験に相当し、未知の新粒子を探索するのに適している。特に、基底状態のパラポジトロニウムとオルソポジトロニウムとのエネルギー準位差(超微細構造)は、実験値と理論値の間に3.9σもの有意なずれが報告されており、このずれが実験の系統誤差によるものでなければ、標準理論を超えた未知の新粒子の存在を表す。研究代表者は現在、このずれを検証すべく、過去の実験とは異なる新たな手法を用いてポジトロニウム超微細構造を測定する実験を行っている。過去の実験は強い静磁場を用い、ゼーマン効果を利用することで間接的に超微細構造を測定していたが、ポジトロニウムが生成される広い領域にわたって一様な磁場を印加することは極めて難しく、最大の系統誤差であった。この不定性をなくすため、超微細構造のエネルギーに等しい203GHzのミリ波を直接照射する手法を採用した。この手法はシンプルではあるが極めて高強度かつ周波数可変性を持つミリ波源が必要とするため、過去に例がないものである。高強度光源として数100Wの出力を持つジャイロトロンを用い、その出力をファブリー・ペロー共振器内に蓄積・100倍程度増幅させる光学系を開発することでこの困難を解決し、直接遷移を観測することに成功した。今後は、超微細構造測定すなわち遷移曲線の測定に必要な周波数可変なジャイロトロンの開発を集中的に行い、世界初のポジトロニウム超微細構造の直接測定を目指す。
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Research Products
(4 results)