2011 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの味覚受容における匂い物質結合タンパク質の機能解析
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09J06539
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
原田 枝里子 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ショウジョウバエ / 味覚 / 機能分化 / 匂い物質結合タンパク質 / 遺伝子重複 / 脂肪酸 |
Research Abstract |
本研究は、キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)のOBP57d及びOBP57eの味覚受容における機能解明を目的とした。昨年度までに、生化学的手法に用いる組み換えタンパク質の合成、およびIn vitroにおけるOBPの内在性蛍光を指標としたリガンドとの相互作用解析方法を確立した。本年度は2つの独立した相互作用解析を行った。1つは遺伝子重複によって生じたとされるDmelOBP57dとDmelOBP57eの機能分化を実験的に検証するため、祖先型に近いとされるD. pseudoobscura OBP57deを基準として両者のリガンド選択性を比較した。調べた化合物について、OBPは炭素鎖の長さおよび官能基の違いでリガンドを認識しており、中でもトリデカン酸(C13)に対し最も高い親和性を示した。また、DmelOBP57dとDmelOBP57eはそれぞれ異なるリガンド選択性を持つように進化した可能性を明らかにした。もう1つの解析は、OBP57dとOBP57e間で高度に保存された11個アミノ酸の重要性を検証する目的で、改変型OBP57dを用いたリガンドとの相互作用解析を行った。11種のうち5種は野生型と同条件での巻き戻しが行えなかった。残る6種を用いて結合度解析を行うと、野生型と比べて大きな違いはなかった。よって保存されたアミノ酸はタンパク質のフォールディングに重要であることが示唆された。さらに、In vitroでの解析結果をIn vitroでも評価するため、ノックアウト系統を用いた行動解析を行った。それぞれのObpの欠損が行動に与える影響が異なったことから、OBP57dとOBP57eはリガンドの選択性だけでなく生体内における機能も異なる可能性が示唆された。 本研究は、配列レベルから示唆されていた重複遺伝子の進化を実験的に検証したという点で意義のある研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来計画予定であった生理学的手法を用いた実験は行えなかったが、本来計画になかったキイロショウジョウバエだけでなく他種のOBPを用いた解析も行った。また、特定のアミノ酸の重要性に対する評価もおこなった。さらに、In vitroにおける評価にとどまらず、行動解析を用いたIn vivoでの解析により、OBP57dとOBP57eの分子レベルでの機能を解明する上で重要な結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の最も重要な課題は、生理学的アプローチによる2つの匂い物質結合タンパク質の機能的違いを明らかにすることである。このためには電気生理の手法を用いて、これらのタンパク質が作用する神経の同定やタンパク質の存在がどのように味覚受容へ影響を与えるのかを直接的に解析することが必要である。上記の手法はすでにキイロショウジョウバエにおいて確立されている方法であり、今後技術の習得並びに条件検討を行っていく必要がある。
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Research Products
(2 results)