2010 Fiscal Year Annual Research Report
共通揺動外力による非線形素子のコヒーレンスと神経細胞ネットワークでの同期の制御
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09J06640
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
新井 賢亮 独立行政法人理化学研究所, 脳回路機能理論研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | cortical information processing / neural network / nonlinear oscillator / in vivo data analsis methods / optimization / local field potential / multi-unit analysis |
Research Abstract |
今年度の主な成果は1)随意運動中のラットの運動野(大脳皮質内)の情報処理機構、特に運動野の各層における神経細胞の表している運動についての情報の表現が層ごとに異なる事が示せた事と2)非線形振動子がランダムインパルス入力信号の統計性と入出力関係を明らかにした事と3)非線形振動子の共通ノイズ同期現象において、振動子を最も早く同期させる最適な振動子のダイナミクスを求める事が出来た。1)に関しては、例えば運動と同時に運動野の細胞の発火率が上昇すれば、その細胞が運動のコーディングと直に関係していると考えられる。先攻研究によると、6層構造になっている運動野の層は、全て細胞の種類と投射元が異なるにも関わらず、この発火率だけでみると、全ての層で細胞が同じ様な情報処理をしているかの様に見える。だが、細胞の発火だけではなく、細胞へのシナプス入力であると考えられているlocal field potentialと細胞の発火の関係性を独自に開発したSLiCed解析で調べると、layer 2/3とlayer 5の細胞は、ネットワークとの同調の様子に差が大きく見られた。この結果から、おそらくlayer 2/3の細胞は直接な運動をコードしている訳ではない、layer 5の細胞群とは瞬間的に協力し合い、layer 5の情報表現が成り立っている事を示唆している。2)と3)は関連している仕事である。2)では共通ノイズ同期現象と周期外力による引き込み現象の違いを明らかにし、これを同期の強さだけではなく、入出力の関係性にも二つの現象の違いが見られた。3)では軟体動物の神経細胞で良く見られるインパルス応答の形の機能的な意味を振動子の同期に最適な形という観点から導き出す事が出来た。軟体動物の神経系では細胞数が少なく、個々の細胞が別の細胞に与える影響が大きいので、我々のインパルス応答での最適化は妥当であり、この結果は哺乳類等の神経系との情報処理の違いの解明に役立つと思われる。
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