2010 Fiscal Year Annual Research Report
構造変化する二重ラセン分子の開発と運動機能性物質への応用
Project/Area Number |
09J06656
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 望 東北大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 二重ラセン / ヘリセン / オリゴマー / 側鎖 / 円二色性 / ベシクル |
Research Abstract |
本研究は,二重ラセン分子が組織的に秩序ある運動を行うシステムを構築して階層的に物質を徐々に大きくすることで,ナノメートル単位の分子の挙動を目に見える異方的な運動に変換することを目的としている,この基盤として,異なる二本鎖,すなわち(M)-体と(P)-体のエチニルヘリセンオリゴマーが選択的に会合することに着目し,研究を進めてきた.これまでに報告した(M)/(P)複合体は,複合体間の相互作用によって高次会合を形成するため溶解度が低く,会合次数が確認できなかった.そこで立体的障害により高次会合を抑制するため嵩高いアルキル基を側鎖に有するオリゴマーを合成した.条件を検討した結果,沈殿などが生じていない均一な(M)体と(P)体の混合溶液が得られ,蒸気圧オスモメトリー法による分子量測定が可能になった.会合体の分子量は,二本鎖が1:1で会合したヘテロダイマーの分子量と良い一致を示した.また,この溶液は強い円二色性を示した.これらの結果より,(M)/(P)複合体が不規則な多分子会合体でなくヘテロ二重ラセンであると結論付けた.本研究の基盤となる分子レベルの会合を明確にしたことは重要な成果である.また,この嵩高い側鎖を有する(M)-体と(P)-体オリゴマーのジエチルエーテル溶液を混合し,雲母基板上での表面構造を原子間力顕微鏡で観察したところ,ドーナツ状の凹凸が多数観察された.ベシクル,すなわち内部に空洞を有する球体が形成されていると考えられる.また,この会合形成が側鎖や鎖長の組み合わせおよび濃度に依存することがわかった.水素結合部位を持たない低分子化合物から形成されるベシクルの例として希少な例である.この会合がヘテロ二重ラセンを経て形成されるならば,ナノメートル単位の二分子会合をマイクロメートル単位の規則的な会合体に階層を上げる足掛かりとなるため,本研究の目的のためにも重要な結果である.
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