2009 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初期の軽元素組成の進化と素粒子模型の天文学的制限
Project/Area Number |
09J06817
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日下部 元彦 The University of Tokyo, 宇宙線研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 軽元素 / 天体核物理 / 素粒子 / 宇宙論 / 超対称性理論 / 元素合成 / 初期宇宙 / 再電離 |
Research Abstract |
宇宙背景放射の観測から推測されるバリオン数-光子数比に対して標準ビッグバン元素合成理論が予言するリチウム同位体の存在度が、昔にできた低金属量の星で観測される存在度と一致しないという問題がある。この問題は、宇宙初期に標準的ではない過程が起こった可能性を示唆する。この可能性を評価するために今年度は以下の研究を行った。 1.標準模型を超える素粒子模型の中には比較的長寿命で色を持つ重い粒子が存在しうる。宇宙初期にこのような粒子がリチウムを含む軽元素の存在度に影響を与えた可能性を評価し、また、粒子の存在度と崩壊寿命に天文観測からの制限を与えた結果を発表した。 2.宇宙初期に色は持たないが電荷を持つ重い粒子が存在した時の元素合成について、核反応の量子多体計算理論のグループが求めた反応断面積の値を用いて最も現実的な元素合成の結果を求めた。このシナリオで9Beは多く合成されないということを示した。また、暗黒物質の直接検出実験CDMS IIが示唆する暗黒物質質量への制限を用いて、負電荷粒子が暗黒物質に崩壊するモデルにおいて、元素合成時代に軽元素組成に影響を与えられるほど高い存在度が可能かどうかを議論した。 過去に宇宙が膨張する中で、星やクエーサーなどの明るい天体が形成すると、その光で水素原子が再電離すると考えられているが、天体形成や電離過程の履歴はまだ明らかでない。 3.そこで、C原子、Cの一階電離イオン、0原子が紫外光で励起し即時に脱励起する過程で起こる微細構造の励起過程、それに付随して紫外光が微細構造線に残す信号に着目して研究を行った。宇宙の初期にCや0が合成され、それらを含む中性水素領域に天体起源の強い紫外光があたるときの信号を計算した。宇宙の中でこの信号が見えやすい環境が実現しているならば、その信号を現在建設中の電波干渉計ALMA、あるいは次世代天文観測で受けられるという結果を得た。
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Research Products
(10 results)