2010 Fiscal Year Annual Research Report
潮間帯岩礁域における藻類食ギンポ亜目魚類と藻類の相互関係の解明
Project/Area Number |
09J06886
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
村瀬 敦宣 東京海洋大学, 大学院・海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 潮間帯 / 岩礁域 / 群集生態学 / 魚類 |
Research Abstract |
本研究は、タイドプールという閉鎖環境を利用した方法で潮間帯岩礁域に生息する魚類を定量的にサンプリングし、正確なバイオマスに基づく群集構造および優占する食性グループを明らかにすることを目的の一つとしている。平成22年度はこれまで採取したデータのまとめを行い,博士論文の執筆を行った。屋久島南西部で行った4シーズンにわたる群集構造に関する調査の結果,個体数ではイソギンポ科が全個体数の57,1%を占め,重量に換算した場合,イソギンポ科は全体の83.9%を占めていた.屋久島と同様な調査を館山湾内の岩礁性海岸で行ったところ,ハゼ科魚類2種とメジナ科魚類1種が全体の約75%を占める結果となった.屋久島では群集の大半を藻類食のイソギンポ科魚類が占めていたことから,低緯度地域ほど藻類食者が多く,高緯度に向かうにつれ,その割合が低下していくという沿岸の魚類群集で多くみられる現象が,黒潮流域の潮間帯岩礁域に限定した場合でも成り立つことが示唆された. さらに屋久島の岩礁性タイドプール内で多様性がもたらされる要因を明らかにするために,タイドプール内に生息する魚類の分布パターンと底質の関係を調査した.その結果,この群集内で優占する藻類食のイソギンポ科の複数種は,水温が高く,糸状藻類の密度が高くなるタイドプールの上層に集中して分布しており,多変量解析の結果,これらの種の密度は水温,糸状藻類の被度に影響を受けていた.これに加え,深さの影響をなくした浅いタイドプールを数ヵ所選んで汀線からの距離に注目して水平的に優占魚種の分布調査を行った.その結果,食性など同じ生態学的特徴をもつ複数種間では水平分布パターンがまったく異なっていることが示された,以上2通りの調査結果から,潮間帯岩礁域における空間的な異質性が多種多様な魚類の存在を可能にしていることが示唆された.
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